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22万円台の光造形3Dプリンタ「ノーベル 1.0」はどこまで使えるか——実機レビュー

数千万の光造形3Dプリンタ VS ノーベル1.0で真空注型に挑戦

これまでSLA方式3Dプリンタはプロシューマー市場で使われてきたということで、プロが使用するハイスペック機と比較してみることにした。ここからは3Dプリンタによる試作造形の専門家による比較検証結果を紹介する。協力していただいたのは横浜にある「栄光デザイン&クリエーション」さん。3Dプリンター屋を共同運営する毛利さんが所属する試作品製作専門の会社だ。

これがSLA方式3Dプリンタのハイスペック機、3D Systemsの「iPro 8000」。1台数千万クラスの超大型機だ。

このハイスペック機とノーベル 1.0でそれぞれ真空注型用のマスターデータを出力し、その精度を検証してみる。 

真空注型とは……
量産で利用される金型の替わりにシリコンの型を使って複製する工法。金属を使う金型と比べて、低コストかつ短期間に複製することが可能。ただし、1つの型で複製できるのは20~30個という制約がある。

 

こちらが出力したマスターデータ。左からノーベル 1.0、iPro 8000、FFF方式3Dプリンタ「MakerBot Replicator 2X」で出力したもの。

ノーベル 1.0(上)とiPro 8000(下)で比較すると、Pの文字が出力されていなかったり、中央のマッチ棒のような形の穴が十分に開いていないなど、細部に違いがみられた。

こちらもノーベル 1.0では切り抜いた文字(PlantX)が再現されていなかった。
なぜ再現されなかったのだろうか、毛利さんはこう分析する。

「推測になりますが、まずマッチ棒のような穴は、FFF方式ではラフトと呼ばれる第1層面がプレートから剥がれ落ちないようにする補強の設定をONにしたため、内部の開口部にもそのラフトのようなものがついてしまったと考えています。

また、PlantXの文字が消えてしまったのは、上記のラフトの設定がONであったため、1層分埋まってしまい、また吊り下げ式造形機の機構として、内部に樹脂が溜ってしまい底面を塗りつぶす際にその閉じ込められた樹脂も一緒に固まってしまったと考えられます。かなり専門的になるのですが、レーザーの焦点と、臨界露光量Ec(mJ/cm2)と透過深度(Dr)がまだ最適化されていないのかもしれません。レーザー透過性の低いグレーの樹脂だと、いい結果を得られる可能性もあります」

業務用の二次硬化装置。個人の場合、ネイル用の紫外線照射装置や30分ほど太陽光に当てることで代用できる。 業務用の二次硬化装置。個人の場合、ネイル用の紫外線照射装置や30分ほど太陽光に当てることで代用できる。

比較はここまでにして、さっそく真空注型にトライする。

実験するに当たって、ノーベル1.0の造形品はアルコール洗浄しても多少のべたつきが残っている。これは、レーザーによる照射だけでは紫外線硬化樹脂の表面は100%硬化しないためだ。

iPro 8000をはじめ多くの業務用SLA方式3Dプリンタでは、二次硬化装置で紫外線蛍光灯による再硬化を30分程度行うことで表面のべたつきを取って、後のサンドペーパーによる磨き作業を楽にするようにしている。未硬化部分が残っていると次工程で注型のシリコンと化学反応を起こし、シリコン硬化不良の原因にもなるので、ノーベル1.0出力後に30分程度の再硬化を行った。これにより造形品も硬くなり、変形を起こしづらくなる。

このような装置を持っていないユーザーでも、ネイル用の紫外線照射装置を数分当てるか、天気の良いときに太陽光に30分程度まんべんなく当てると、同様の効果が得られる。

ノーベル 1.0で出力しなおしたものに2次硬化後、#240のサンドペーパーで磨いて、さらに下地材を塗ったもの。これをマスターにしてシリコンの型を作った。

真空状態にした注型機の中でシリコン型に樹脂を流して固まるのを待つ。

正確に複製できている。

「真空注型のシリコンは硫黄分やシンナーその他さまざまな薬品と反応してしまうと、シリコンが固まらない硬化不良を起こしやすい。また、業務用の注型は60度から80度の炉で温度管理をして硬化時間の短縮や寸法精度を調整するので、耐熱性に乏しい光造形品には過酷です。熱変形を起こすこともありますが今回は起きていません。つまり、一般のホビーユーザーがもっと条件のゆるい常温常圧で注型する場合なら、造形後の二次硬化とサフェーサーによる下地処理を行えば問題なく注型できるということですね」(毛利さん)

正しく出力ができれば真空注型のマスターとしても、十分機能するようだ。
現時点では細部の出力にまだ課題があるようだが、今後のファームウェア改善でより精度が上がればクリアされるだろう。

結論:精度よりも見た目のきれいさが重要なフィギュア、アクセサリーには問題なし。注型マスターに使うのは、ソフト側の改善を待つか、モデリング側でそれを見越したデータ作りをする必要がある。

「ここまでの出来で、この価格で発売されるのは、25年前には全く考えられませんでした。すごい技術の進歩です。ダヴィンチシリーズもそうですが、誰でも簡単にワンタッチでできることはとてもすばらしいことです。しかしもう少し高度なことをしたいユーザーにとっては物足りない面もあります。また、本体自体はかなりの性能の良さを感じますが、現状のソフト、特にサポート性能にはまだ課題があるので、この改善と樹脂の開発に取り組んでほしいですね。この領域は業務用もこの10年ほとんど進歩していませんから」(毛利さん)

22万円台というインパクトのある価格で登場したノーベル1.0。プロの視点による厳しい指摘はあるものの、今後のソフトウェア改善によっては十分にプロユースでも利用可能であり、現状でもFFF式3Dプリンタを愛用するホビーユーザーの次の1台としても検討できる製品だということがわかった。
いずれにせよ、これまでSLA方式でのプリントを外部に発注していたユーザーにとっては注目の1台。家電量販店でも購入が可能なので、このレビューを読んで気になった人はぜひ実物を確認してほしい。

 

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