開発中のフード3Dプリンタ「XYZ Food 3D Printer」レビュー
これが未来の食卓なのか——注目のフード3Dプリンタを使ってみた
おぉ、出てきた出てきた。やったー!と言いたいところだが、実はここまでうまく材料が射出されるまでには、何度かトライを繰り返した。材料を詰めた後、最初の出力までに手こずり、3、4回トライするまでは材料が出ないまま虚しくシリンダがーが動くというケースが何度かあった。
材料にあわせて押し出す力も選べるようなので、「この素材の場合はこれ」というガイドが充実すれば、こういった失敗は無くなるかもしれない。
出力した結果がこちら。3Dプリンタのような細かな造形は難しいが、手作業では難易度が高い絵柄が簡単に造形できるのは最大の特長だ。
実際に焼いてみると絵柄が少し潰れてしまったが、焼く際の膨張率などの経験値が貯まってくれば、よりくっきりとした仕上がりになるだろう。
続いて和菓子にもトライ。餡子と白玉粉を混ぜて作る「練りきり」にチャレンジしてみた。
クッキーとの粘度の違いを検証できるよう、白玉粉を少な目に配合して造形してみた。
左の縦棒は造形物を出力する前に出力される。これが出ていなければ、その後の造形も正しく素材が食材カートリッジから射出されずに失敗する可能性が高いので、造形を中止しよう。
細かな模様もきちんと再現出来ている。少なくとも家庭で楽しむ和菓子としては十分な仕上がりに感じる。
一般の女性はどう思っている? 家族や友達にフード3Dプリンタについて聞いてみた
家族や女性の友人にもフードプリンターで造形したお菓子を食べてもらいつつ、感想を聞いてみた。
■ 妻(兼業主婦)
「本体の大きさに対してできる事が少ない印象があるなぁ…。温めたり冷やしたりする機能を付けるか、今よりも本体を小さくした方が、キッチンが小さい日本でも受け入れやすいと思う。あと、これがどのくらいの価格で買えるのかもすごく気になる。クッキーミックスとか簡単にできるものであれば準備は楽だけど、出すのに何度も失敗したし、すでに材料が装填されたものが売られていると便利だと思う」
主婦らしいシビアなコメントだ。確かにオーブンレンジと並べると、台所をかなり占有してしまう。キッチンが広い飲食店や海外ではどういった反応があるかも気になるところだ。材料面についても、簡易エスプレッソマシンのように、装填済みの材料があると確かに手間は省けそうだ。
■ 娘(4歳)
「お父さん、早くおかし出して!」
もういいから、あっちで遊んでてください。
■ 友人:Mさん(女性 デザイナー)、Hさん(女性 事務)、Kさん(女性 広報)
Kさん「レストランとかで出てくる誕生日のお祝いのプレートで、お皿に字が書いてあるのが好きじゃないの。あれがチョコレートで字をささっと書くんじゃなくて、文字があしらわれたクッキーとかで出たらいいよね。こういう機械だったらできるんじゃないかな。自分専用にクッキーを焼いてくれた方が嬉しい」
Mさん「確かにいろんなレストランで需要ありそうだよね。繊細な形のものが出せれば職人いらずになりそう」
Hさん「同じ形のものがたくさん作れるから、フォーチュンクッキーとか作ったら楽しそう。フード3Dプリンタを買ったとしたらみんなに自慢したいから、お祝いの席とかパーティで使いたいよね(笑)」
Kさん「あとフルカラーで着色できたら、写真データを使ってお菓子に印刷とかもできるよね。販促物にも使えそうだし」
お祝いの時に、自分の名前のクッキーをもらった方が嬉しいというのは思ってもいませんでした。また、3人の話ぶりから、なんとなく家に置くのではなくお店や業者さんが使うものというイメージを感じたので、なぜそう思うか尋ねたところ、家庭で使うシーンが少なそうだからとのこと。さすがに女性は目線がシビアです。
まとめ
機能が明確なのですぐに利用シーンを想像しやすいというのは、いわゆる既存の3Dプリンタとは異なる点かもしれない。特別な日やお祝いといった用途でのニーズが見込める一方で、筐体の大きさや使用頻度から自宅に置くというシーンはあまり想像できないようだ。
とはいえ、これまでの家電が改良を重ねることで普及していったように、機能の充実や精度の向上、小型化が進めば家庭での利用も想像に難くない。
繰り返しになるが、今回お借りした「XYZ 3D Food Printer」は開発中の製品で、販売時期も価格も決まっていない。しかし、製品化された暁には電子レンジが家庭の食卓を変えたように、料理の幅が広がっていく可能性もあると感じた。
さまざまなメーカーが開発中のフード3Dプリンタが、私たちの生活に何をもたらすのか期待して待ちたい。
取材協力:XYZプリンティングジャパン