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自作ゲームのススメ by TMCN

エンジニアなら花火もセンサで打ち上げろ!——MESHを振って花火を打ち上げるハック

センサ&デバイスに関するオープンなエンジニアリングコミュニティ「TMCN(Tokyo MotionControl Network)」がfabcrossとコラボして、「子ども×センサ」をテーマにした遊べるデバイス作りに挑む。

  • ゲームは買わずに自作する
  • 自作することでものづくりを学ぶ
  • 安価にできる

というコンセプトに基づき、これまで短距離走ゲームプラレールのレースなどを紹介してきた。今回登場するのは「MESH花火」なる装置。MESHを使った点火装置で花火をデジタルに楽しもうと、TMCNのメンバーで、システム開発会社「システムフレンド」が企画。チームを立ち上げ、制作に臨んだ。

MESHとは、動きや明るさ、温度などを検知したり、LEDを光らせたりといった機能を持ったブロックを専用アプリとつなげることで、さまざまなことが簡単にできる電子ブロック。ソニーの新規事業開発として作られた製品で、クラウドファンディングサイトIndiegogoでの資金調達を経て製品化された。現在はソニーが2015年7月に立ち上げたクラウドファンディング/Eコマースサイト「First Flight」を通じて販売している。

これがMESH。 これがMESH。

MESH花火で使用したタグは、動きを検知するMoveタグ(青)、設定を拡張するGPIOタグ(グレー)の2つ。これらを連携させ、遠隔操作で点火するシステムを作った。その上で子どもが合法的かつ健全にできる火遊びといえば花火でしょ……と、これが開発に至る経緯だそうだ。

具体的にどんなモノなのか、頭でイメージするよりも実際に試してみないことには始まらないということで、まずは大人たちの花火大会を開催することにした。

花火やろうぜ!2月だけど

服装でおわかりのように冬です。 服装でおわかりのように冬です。

2月に入ったばかりの某日、MESH花火を体感しようと、屋外でプレゼンを兼ねた打ち上げテストを行うことになった。以前に行った打ち上げテストは、開発責任者であるシステムフレンドの若きエース繁冨くんによる横向き発射のテストが1回だけ。それも動作確認が目的だったため、客観的な使用感は判断できない。実際、子どもたちが遊んだ時にどんなおもしろさを感じられるか、わくわく感や達成感はいかほどのものかなどなどを知るのがテストの目的だ。

わざわざ問屋街まで行って、倉庫にしまってあった花火を買ってきた。 わざわざ問屋街まで行って、倉庫にしまってあった花火を買ってきた。

「冬の花火」なんていうと、中高生の甘酸っぱい恋バナとか学生時代のノリとかの響きがあり、イイ大人はそうそうやらない。そもそも花火の調達も簡単ではなく、スタッフが問屋街まで足を運び、昨夏の残りを倉庫の中から出していただき、なんとか間に合わせた次第だ。

冬の夜空にでっかい花火を打ち上げようぜ!

と、誰が言ったか、誰も言わなかったかはわからないが、ともあれ当日、繁富くん、そのボスの前本さん、fabcrossスタッフ数名が集まり、打ち上げテストに臨んだ。
春から秋にかけてはBBQや花火、釣りなどアウトドアを楽しむ人であふれる河川敷も、2月の平日となると閑散としている。16時に集合し、セッティングなどを始めた。

思っていたよりも日が沈むのが遅く、ひたすら寒い河川敷。 思っていたよりも日が沈むのが遅く、ひたすら寒い河川敷。

野外ロケとなると天候が大きな鍵になる。晴天が望ましく、日没までになんとか終わらせたい……というのが通例だが、今回は花火ということでむしろ日没からが勝負。にもかかわらず、太陽は全然沈む気配なし。天気はいいのに北風がピープー吹き、この上ない寒さがメンバーを襲う。

上司の監視下で黙々と準備する若手。 上司の監視下で黙々と準備する若手。

河川敷での花火ということで、童心に返って楽しもう……なんて当初の意気込みも、みるみる下がる体感温度に到着5分後には消沈。ひたすらセッティングにはげむ繁冨くんを手伝う気がないことを隠すことさえ忘れ、皆かじかんだ手をポケットにつっこみ、足を小刻みに踏み鳴らし、北風に堪えながら言葉少なに日没を待っていた。なんだかんだいってもきっと花火を見れば、今のこの厳しい寒さも喜びに変わるにちがいない、カタルシスに包まれるにちがいない、そんな望みを胸に抱きながら。

あまりの寒さに表情もこわばる。 あまりの寒さに表情もこわばる。

明けない夜がないように、暮れない昼もない。18時前、やっと太陽が沈み、周囲が闇に包まれる。いよいよ開始だ。

澄み渡る夜空に咲く花火

準備している間に日が暮れてきたが、まだ明るい。 準備している間に日が暮れてきたが、まだ明るい。

MESH花火は、ユーザーがMOVEタグを10回振ると点火モーターが動き出し、点火するしくみ。MESHの通信距離は約10mなので、遠隔操作で点火できるのだ。

スタッフがタグをゆっくり振る。約30秒後に点火を示す光りのサインが出る。そして火が導火線に届き、漆黒の闇の中、パチパチと音を立てて、火の花が満開に咲いた。

「おおっ」

やはり花火はテンションが上がる。頑張って寒さに耐え忍んだ甲斐があった気がしてくる。MESH花火もきちんと作動した。 

暗くてよくわからないが、MESHを振って点火する間に風で火が消えないように花火を覆っている。 暗くてよくわからないが、MESHを振って点火する間に風で火が消えないように花火を覆っている。

当初の目的であった楽しさやワクワク感については、想定外の寒さにより冷静な判断は下せなかった。

操作にエンタ性が加わり、子どもが主体的に楽しめる

MESH花火、おもちゃとしてのポイントは、距離と時間である。一般的な花火はマッチやライターで直接導火線に火を点け、数秒後に火を噴く。MESH花火の場合、マッチやライターを使うことはなく、花火から最大10m離れた場所から点火の指令を出すことができる。普段は火を点けるのは大人の役目になるが、MESH花火なら子どもでも安心して点火係ができる。大人のしきりではなく、自ら参加できることで子どもの楽しさは増すはず。さらに、タイムラグもドキドキ感をもたらす。30秒というのは以外と長い。ミッションインポシブル的な、火が導火線をじわじわとたどっていくイメージと、いつ上がるかわからないスリル感はエンタテインメント性を高める。

暖かい部屋で思い返したMESH花火は、子どもたちを喜ばせる要素が溢れていることに気がついた。今年の夏の花火シーン、青いブロックを振る子どもたちの姿があちこちで見られる……ことを願う。 

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