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さまざまな動きを電力に変換する薄型フィルム——靴や走行中のタイヤを電源に

米レンセラー工科大学(RPI)の研究チームは2024年10月15日、圧縮したり振動にさらしたりすると電気を発生する「圧電材料」を開発したと発表した。応用例によっては、環境に優しい技術になる可能性がある。

研究チームは、特殊なカルコゲナイドペロブスカイト化合物を注入した、薄いポリマーフィルム状の圧電材料を開発した。この素材は、歩くことで光源が点灯する靴や、走行中に発電するタイヤ、交通音で点灯する街灯、ビルが自然に揺れ動くことで発電する高層ビルなどに応用できる可能性があるという。

圧電効果は、構造的な対称性を持たない材料によって発生する。この効果を発する圧電材料では、応力を受けて変形することで、材料内のプラスイオンとマイナスイオンが分離する。この双極子モーメントの働きにより、電流が発生する。研究チームが発見したカルコゲナイドペロブスカイト材料では、応力がかかると構造対称性が容易に崩れ、顕著な圧電反応を示す。

これまでの圧電材料の多くは鉛を含むため、その有毒性から、材料や機器からの使用規制や段階的な廃止が進んでいる。研究チームの目標は、鉛を含まず、自然界に普通に存在する元素を使用した安価に製造できる材料の開発だ。

開発したカルコゲナイドペロブスカイト化合物を注入したポリマーフィルムは、鉛を含まない数少ない高性能圧電材料のひとつだ。応用先は、機械やインフラ、バイオメディカル領域が有力な候補となる。

開発したフィルムの厚さは0.3mmで、機械的なエネルギーを電気エネルギーに変換する。フィルムにかかる圧力負荷が大きいほど、また圧力がかかる表面積が大きいほど、その効果は大きくなる。

研究チームは、バリウム、ジルコニウム、硫黄を含む新材料を合成して、歩く、走る、手をたたく、指をたたくなど、さまざまな身体の動きを与えて電気を発生させる能力をテストした。そして、この材料が実験中に電気を発生させ、LEDに電力を供給するのに十分であることを実証した。

RPIの研究チームは今後、カルコゲナイドペロブスカイト化合物の全ファミリーを探索し、さらに強力な圧電効果を示す化合物を探す予定であり、人工知能と機械学習はこの追求において有用なツールとなるだろうと述べている。

今回の研究成果は、学術誌『Nature Communications』に掲載されている。

fabcross for エンジニアより転載)

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