形が変わるマネキンを3Dプリントしたら大変だった
デパートや洋服屋で見かけるマネキン。通常は関節部分しか動かないが、自由に変形できる素材で作ってみたらどうなるだろう。3Dプリンターと最新の樹脂素材で実験してみた。
「動くマネキンがあったら面白そうだな」と思って作り方をあれこれ調べてみたのだが、ロボットにすると予算がとんでもないことになってしまう。
既製品を改造してもいいが、デジタル・ファブリケーションを扱うメディアなんだから、3Dプリントでやってみたらどうだろう。
3Dプリントに詳しい人や企業に相談したところ、形状記憶樹脂という変わった3Dプリント素材を開発しているキョーラクさんが快く協力してくれることになった。
プラスチック製品の開発と製造を行うキョーラクと形状記憶樹脂(SMP:Shape Memory Polymer)の技術を持つSMPテクノロジーズが共同開発した3Dプリンター用の素材「SMPフィラメント」。55度に温めると形を自由に変えられる。いわゆる形状記憶樹脂を3Dプリンターで使えるようにしたもので、温めて形を変えたあとに冷やすと固まり、再度温めるとさらに形を変えられる。
材料は決まったが、3Dプリントするにしても鑑賞に堪えられるものにしたい。その辺のおっさん(筆者)をマネキンにしても誰も得をしないだろう。3Dスキャンで協力いただくケイズデザインラボさんに相談したところ、社員のトレーニングジム仲間の方にモデルになってもらえることになった。
ということで、この人が
こうなった後に
こうなっちゃった。
出力は、以前に3Dプリンターの組み立て記事でお世話になったGENKEIさんに協力いただいた。美術館で見る彫刻はどれもスタイルが良い理由が分かる。見るだけでやたらテンションが上がるのだ。
完成品を生で見た関係者全員が「ヤバい! すごい! かっこいい!」と小学生のようなノリで興奮していた。人は過剰に興奮するとボキャブラリーが貧しくなる。
このまま飾っておきたい気もするが、動かせるマネキンということで早速撮影してみた。
箱から飛び出してみたり
バナナを食べさせて
さらに元気になったり
押しつぶしても、すぐに復活!
技術と労力を盛大に無駄遣いしている気がするが、形状記憶樹脂とパラパラアニメの相性の良さをお分かりいただけたであろうか。
「みんな、ありがとう! 超楽しかった! じゃ、またどこかで!」
とさわやかに終わりたいところだが、この等身大マネキンのgifアニメが出来上がるまで、さまざまな苦労があったので、次のページでメイキングを紹介したい。