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いろんな匠に会いにいく

LED全盛の今、梨衣名が東京の下町で白熱電球を作ってみた

現役モデルにしてコテコテのMaker梨衣名さんが、さまざまなものづくりにチャレンジするシリーズ、今回のテーマは白熱電球だ。

こころなしか昭和のアイドルテイストなポーズで片手にキメてる丸いもの……これこそが白熱電球である。

かのエジソンによって世に出され、ほんの少し前まで蛍光灯とともに、人びとのくらしを照らす光源として重宝されていた黄色い光の電球、「エジソン電球」とか「真空管ランプ」とも呼ばれる歴史ある電球、それを作る。(撮影:加藤甫)

おじゃましたのは東京荒川区にある細渕電球。1938年に創業し、医療機器用の手づくり電球の研究、開発に取り組んできた電球づくりのパイオニア的企業だ。
長年にわたり「腕におぼえあり」の職人技師たちによる繊細な手作業で実績を積んできた。

細渕電球で製造している内視鏡用の電球。 細渕電球で製造している内視鏡用の電球。

今回、電球づくりのワークショップを開催するということなので、そちらに参加させていただくことにした。

日本の竹が成功に導いたエジソンの白熱電球

白熱電球は、電流を流すことによりフィラメントが白熱化し、白色光を発するしくみを使った電球。中を真空にすることによって長時間の発光を実現している。
この原理を発明したのはイギリスの物理学者・スワンだが、完全なものではなく、完成させて実用化したのはエジソンだ。

「世界から夜が消えた」──エジソンの数ある発明のなかでも、もっとも価値があると言われる白熱電球も、成功へ導くキーアイテムとなったのが日本の竹であることは意外に知られていない。

フィラメントの素材としてさまざまな素材を試したエジソンがたどりついたのが竹からつくった炭であり、最終的に京都の八幡の竹が品質的にベストということになったのだ。
八幡の竹はエジソン電灯会社で何百万個の白熱電球のフィラメントとして10年あまりの間、世界中の暗闇に光をもたらしたのである。

……というような講義からワークショップは始まった。
今回は太陽くんという小学生の男の子もいっしょだ。
仲間がいるのは始めてとあって、ずいぶん心強かったようだ。おそらくだけど。

これがフィラメント。
現在は竹ではなく綿を使ったものがスタンダード。

細く、コイル状に巻いているものが見えるだろうか 細く、コイル状に巻いているものが見えるだろうか

まずは発光部分を作る

さて、いよいよスタート。最初は「継線」という工程。
ニカワをつかってフィラメントの両端を電極に接着する。
繊細さを要する作業だ。

ここで「ステーム」という部品が登場する。
ステームは、電極を左右のフィラメントにつなぐ、ガラス球と結合する、中央のストローにより真空状態をつくる、といった3つの役割をもつ重要なユニットだ。

ステームの2つの電極で、のりの役目を果たすニカワをすくう。

大きすぎても小さすぎてもよくない。 大きすぎても小さすぎてもよくない。

うまくすくえた。ニカワが小さな玉になって、2つの電極の先についた。

そして、今度はそれをフィラメントの両端につける。

●ミクロンという細さ。真剣に慎重に。 ●ミクロンという細さ。真剣に慎重に。

くっついた!
継線成功!

ステームとフィラメントがニカワによってつながった。 ステームとフィラメントがニカワによってつながった。

電球の根幹となる発光部分の完成だ。

ニカワが乾くのを待つ。手前が梨衣名さん。その奥が太陽くん。

匠のワザに吸い寄せられて

次の工程は地下の作業場なので、移動。
当日は平日ということもあり学校は冬休みだが、大人の世界では通常業務の日だったため、お仕事している方たちの邪魔にならないように心がける。

いや、心がけていたのだけど、梨衣名さんの目が、ある人をロックオン。
なにやらとても楽しそうだが、どうやらたいへん職人的な作業にいそしむ社員さんがいた。

それまでワークショップでやっていた継線の、商品用仕様となる本格ヴァージョン。
肉眼ではとても認識できないミクロの点と線との接続だ。

「すごい!(by 梨)」
うん、たしかにすごい。
プロフェッショナルだ、仕事の流儀だ。

「やりたい!(by 梨)」
……え。
いや、ダメでしょ、これは。
むりでしょ、そもそも。

だって、こんなのだし。

じゃましたことを謝って、速やかに立ち去ろうとしたところ、なんと
「やってみる?」
なんて、やさしすぎる言葉をかけていただいた。

「はい、やりたいです!(by 梨)」
なんというありがたい。
無理は承知でも食い下がってみるものだ。
(※よい子は真似しないでね。ちなみに太陽くんは真似しませんでした)

ともあれ社員さんのご厚意でやらせていただけることになった。

ただ、同じ作業は絶対に無理ということで、少しだけ難易度を下げたもの。
とはいえ6Vの電球というからかなり極小用の継線、さっきとは比べ物にならないほど繊細な作業になる。
商品用なのでニカワではなく、スポット溶接でフィラメントとステームを継ぐ方式だ。

スポット溶接機。先端の2点の交差とタイミングを足で調整する。 スポット溶接機。先端の2点の交差とタイミングを足で調整する。
真剣 真剣
慎重 慎重

3本目でほぼ完璧に接着!
「まあまあです」と、最大級のお褒めの言葉までいただいた。
もちろん商品には使えないので、記念に持ちかえることに。

ありがとうございました!
そして
おじゃましてすみませんでした!

脇道で高い達成感を得たところで、ワークショップに戻る。

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