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3Dプリンター長期使用レビュー:2つのノズルを使い倒せ! 「FLASHFORGE Creator3」

Apple Treeは、2019年7月にFLASHFORGEの“準工業級”デスクトップ型3Dプリンター「Creator3」を発売した。Creator3は独立デュアルヘッドが特徴で造形サイズも大きく、準工業級といううたい文句の通り高いスペックを備えた機種だ。価格は32万1000円(税別)と、個人よりは若干プロを意識した価格になっている。今回はデュアルヘッドの機能などを中心に、Creator3の使い心地や実力をレビューしていきたい。

堅牢な本体の気になるディテール

左:梱包のダンボールはかなり大きい。右:置く場所がなく寝室を圧迫している様子 左:梱包のダンボールはかなり大きい。右:置く場所がなく寝室を圧迫している様子

Creator3は最大造形サイズが300×250×200mm、本体が627×485×615mmと、本体も大きければ梱包用ダンボールもかなり場所を取る。重量も本体のみで40kgもあるので、2人以上で運んだほうがいい。実際、玄関に機材が届いたものの、1人ではダンボールのままでは運べず、その場で梱包を解いて設置場所へ運ぶことになった。

左:上から見たところ。内部の様子が確認できる。右:扉を開けるとスプールホルダーがある。 左:上から見たところ。内部の様子が確認できる。右:扉を開けるとスプールホルダーがある。

外観は黒ベースの少しSF感あるデザインだが、正面の扉と天面が透明になっており出力の状況が見やくなっている。また、本体左右にはデュアルヘッドそれぞれのフィラメントを入れるスペースがあり、扉を開けるとスプールホルダーが収まっている。

タッチパネル画面の様子。水平校正は画面の案内に従って簡単に行うことができる。 タッチパネル画面の様子。水平校正は画面の案内に従って簡単に行うことができる。

正面上にはフルカラーのタッチパネルがあり、多くの操作はこのタッチパネルで完結する。フィラメントの交換や各種校正なども、タッチパネルの指示に従うだけで難しい操作はほとんどない。実際にノズルの高さの校正は自動で行われ、水平校正に関しても校正用のつまみを左右に45度、90度回すなどの的確な指示のもと進めることができた。

左:エクストルーダーのユニット。左右対称に同じものが付いている。 右:フィラメントのダストボックス。2色での造形の際にでる余分なフィラメントをブラシで取り除いてくれる。 左:エクストルーダーのユニット。左右対称に同じものが付いている。
右:フィラメントのダストボックス。2色での造形の際にでる余分なフィラメントをブラシで取り除いてくれる。

ノズルはステンレス製で300度まで昇温することができるため、多様な樹脂を出力することができる。また、ノズルの下には樹脂の切替時にノズルからでた余分な樹脂を捨てるブラシと樹脂くずを溜める専用トレイが設置されている。

Webブラウザーでアクセスできる無料のクラウドサービス「FlashCloud」から、データアップロードや出力データのモニタリングが可能だ。 Webブラウザーでアクセスできる無料のクラウドサービス「FlashCloud」から、データアップロードや出力データのモニタリングが可能だ。

Creator3には出力の様子をモニタリングできるHDカメラがあり、3Dプリンターの制御や管理ができるクラウドサービス「FlashCloud」を通じて、Webブラウザーから出力をモニタリングできる。フィラメントが切れた場合には自動停止するなどFFF方式(熱溶解積層方式)の3Dプリンターとしてはフル機能といったところだろうか。プロ向けとしても十分な機能が備わっているように感じた。

デュアルヘッドでの出力は3パターン

2色造形ではフィラメントが混じるのを防ぐため、壁(写真:左)を作るかワイピングタワー(写真:右)で余分なフィラメントを吸収させることができる。 2色造形ではフィラメントが混じるのを防ぐため、壁(写真:左)を作るかワイピングタワー(写真:右)で余分なフィラメントを吸収させることができる。

目玉の機能である独立デュアルヘッドには3つの出力パターンがある。ひとつは2種類の樹脂を使った2色プリントで、片方に水溶性のPVCフィラメントを使ってサポート材を出力し、造形後に水で溶かすことなども可能だ。実際の出力ではノズルから出力される余分な樹脂を両サイドのブラシでノズルを掃除することで、よりきれいに2色プリントができるように工夫されている。また、ブラシ以外にもスライサーのソフト上で造形物の近くに壁を作る機能やワイピングタワーという機能があり、それぞれのノズルの余分な樹脂をこのタワーで吸収してから造形できるようになっている。これによって、2色の樹脂が混ざってしまう現象を軽減できるようになっている。

2つ目のパターンは、同じ造形2つを同時出力するコピー出力だ。Creator3の独立デュアルヘッドは、2つのヘッドが連結して動く一般的なデュアルヘッド3Dプリンターと異なり2つが完全に独立して動くので、同じ造形を2つ同時に出力できる(写真)。卓上のFFF方式3Dプリンターで量産をしたいときでも、出力時間を2分の1に短縮できる。

この同時ヘッド出力は左右で全く同じ動きをさせて出力することもできれば、3つ目の造形パターンとして左右対称の動きで出力することもできる。左右反転した造形物が出来上がるので、左右のパーツを一度に出力するということも可能だ。

木質、PCなどの多様な素材

FLASHFORGEの公式オンラインストアではABSやPLAなど、よく使用するフィラメントに加えて、HIPS、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアミド/ナイロン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PETG(ポリエチレンテレフタラート)などの多様なフィラメントを取り扱っている。また、PLAに木粉や金属粉を混ぜた特殊フィラメントもある。Creator3はノズルの温度が300℃まで加熱できるため、その全てのフィラメントを使用することができる。

左から木質フィラメント(ダーク)、PC、PLAで出力したクランプ。 左から木質フィラメント(ダーク)、PC、PLAで出力したクランプ。

今回はクランプの3Dデータを3種類のフィラメントで出力したもので比較した。

木質フィラメントは本物の木粉とPLAを混ぜている素材のため、表面が他のフィラメントに比べてざらついた印象で、造形物から木の匂いがした。表面のざらつきからか、素材の粘りからPCやPLAと比べて寸法精度の差を感じたので、設計時には素材の特性などを考慮するなど注意されたい。

PLAとPCは写真からも分かる通り、素材の強度の差が如実に現れた。PLA(写真:右)はクランプのねじを締めると樹脂の強度が弱く若干広がってしまうが、PC(写真:中央)にはそれが見られない。ただし硬度はあるものの靭性があまりないためボールジョイントを嵌めるときにツメが何度か破断してしまった。このようなクランプには靭性や破壊伸び率の高いPAなどが向くだろう。

水溶性サポート材として期待されたPVAに関しても検証をしたが、多湿な時期が重なり筆者の保管状態も悪かったため、何度か検証を進めている間に湿気による劣化をしてしまった。乾燥している冬などを狙って再度挑戦したいと思う。

まとめ:どんな人がCreator3を買うべきか

3カ月ほどCreator3を使ってみた結果、Creator3はプロユースの機種としては扱える素材が多く、造形サイズも大きく安定した出力ができる機種という印象である。ただし以下の2点については造形の失敗をしやすい点なので注意したい。

1点は取り外し可能なプラットフォームの反りがきついので、ちゃんと装着ができずにノズル高さがエラーになって造形ミスを起こすことである。しっかりと装着できていれば自動高さ調整があるので失敗はほとんどないのだが、この装着には少しコツがいるようだ。

2点目は、300℃という高温ノズルとヒートベッドでエンジニアリングプラスチックなど多様な素材を出力できるものの、樹脂素材によっては湿気に弱くその保管環境によってフィラメントの劣化によりきれいに出力できなくなってしまう点だ。フィラメントは一巻き500~1000gなので、特に湿気に弱い樹脂などは劣化する前に使い切るか、除湿ができる保管ボックスを用意する必要がある。また、Creator3では本体にセットしたまま使えるフィラメント用の除湿ケースの開発が進められていると聞いているので、こちらの発売に期待したい。

さて、では結局Creator3はどのような層に適しているかを考えていきたい。価格帯やサイズ感的に、個人で購入するには設置スペースを考えると少しオーバースペックではある。かなり本気で3Dプリンターの利用を考えている方で、設置スペースが確保できるのであればお薦めしたい。

学校や研究室、デザインスタジオであれば、Creator3が1台あるとかなり強力な3Dプリンターになるだろう。2色造形がピンポイントで用途にはまるのであればなおさらだが、あまり2色造形をしないとしても、コピー出力で一度に2倍の造形力があるのはかなり魅力だ。また、公式オンラインストアで扱っている素材自体も豊富ではあるが、サードパーティーのフィラメントも使用できるので、実際の用途にあった樹脂が使えるだろう。

筆者個人としては、通常の使用の範囲を超えないのであれば、かなりハードに使える3Dプリンターとして手元に置いておきたい機種であった。

地味にうれしい、片方が失敗したら失敗した方だけノズルの出力を止めることができる機能。タッチパネルから停止するノズルを指定することができる。 地味にうれしい、片方が失敗したら失敗した方だけノズルの出力を止めることができる機能。タッチパネルから停止するノズルを指定することができる。
上段:木質フィラメントはかなり気に入ったのでフィギュアやブックケースを作ってみた。 <br />下段左:造形サイズが長辺で300mmあるので下駄を片足ずつ出力したところ。 <br />スライサーのFlashPrintの更新も頻繁にあり、3Dインフィルという高速で強度のあるインフィルが最近実装された。 上段:木質フィラメントはかなり気に入ったのでフィギュアやブックケースを作ってみた。
下段左:造形サイズが長辺で300mmあるので下駄を片足ずつ出力したところ。
スライサーのFlashPrintの更新も頻繁にあり、3Dインフィルという高速で強度のあるインフィルが最近実装された。

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