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ラズパイで何作る? 職場や生活を少し便利に「入門向け創作アイデア」

Raspberry Pi(通称ラズパイ)という小型コンピューターをご存じですか? 安価ながらパソコン並みの性能を持ち、Node.jsやPythonといったプログラムでセンサーやデバイスの制御ができるハードウェアです。個人の電子工作からビジネスまで幅広く使われており、取り組む方も増えています。この記事では、ラズパイを使ってみようと考えている方に向けた、入門向けの創作アイデアをご紹介します。

Raspberry Pi(ラズパイ)とは?

改めてRaspberry Piを紹介すると、約6000円で買うことができる小型のコンピューターで、「ラズパイ」の略称でも知られています。クレジットカードサイズのボード1枚に全ての機能が搭載されていることから、SBC(シングルボード コンピューター)と呼ばれるカテゴリーに属するハードウェアです。

Raspberry Pi 4 Model B外観 Raspberry Pi 4 Model B外観

CPUやメモリーはもちろんのこと、Wi-Fiや有線LANといった通信機能に加え、USBやHDMI端子といったパソコン並みの機能を持っていますが、特徴的なのがボード上の「ピン」です。これはGPIO(汎用入出力)と呼ばれるインターフェースで、ここにセンサーやデバイスを接続できます。

GPIOはNode.jsやPythonといった、Webやクラウドの開発で馴染みのあるプログラム言語から操作できることから、ハードウェア開発の入門機として人気が高く、fabcrossでもRaspberry Pi関連の記事や、「それ、ラズパイでつくれるよ」といった連載記事が組まれています。

最近ではラズパイを利用した「製品」が登場するようになり、ビジネスシーンでも存在感が増しています。そのためエンジニアの学ぶ対象として、ラズパイに注目が集まっているわけです。

Raspberry Pi を組み込んだ製品例:ソラコムのAIカメラ「S+ Camera Basic」 Raspberry Pi を組み込んだ製品例:ソラコムのAIカメラ「S+ Camera Basic」

IoTとの相性が良いラズパイ

IoT(Internet of Things)とは「遠くに離れた機器や現場をデジタル化して、ネットワークで共有/操作する」ものです。センサーやデバイスの接続ができ、通信機能が標準で備わっているラズパイはIoTとの相性が良いのです。例えば「生鮮食品」に特化したECサービスを展開しているクックパッドマートは、ラベルプリンターの制御にラズパイを用いて高速な開発を実現しています。

クックパッドマート SORACOMを使って 高速プロトタイピングより — 左から2番目でラズパイが利用されている

“ラズパイ × IoT” の活用場所を広げる「モバイルデータ通信」

豊富な機能と開発の手軽さから、様々な場所でラズパイによるIoTを活用したくなりますが、課題となるのが通信です。例えば屋外だけでなく玄関やトイレ、お風呂場など、Wi-Fiが届きづらい環境は身近にあります。

そういった環境で使えるのがLTEや5Gによる「モバイルデータ通信」です。Wi-Fiが無い場合のスマートフォンの通信として知られていますが、実はラズパイでもモバイルデータ通信が利用できます。それがUSBに挿して利用するアダプタ 「USBドングル型モデム」 です。

ラズパイにUSBドングル型モデム(SORACOM Onyx)を挿している様子 ラズパイにUSBドングル型モデム(SORACOM Onyx)を挿している様子

USBドングル型モデムにSIMと呼ばれるICチップを入れることで、ラズパイでモバイルデータ通信ができるようになります。SIMは通信事業者と契約することで入手でき、SORACOMでも契約いただけます。
これでWi-Fiが無い環境でも、ラズパイを通じたIoT活用が可能となるわけです。

ラズパイ入門にオススメ! Webカメラで作る「遠隔カメラ」

ここからは、無償で公開されているIoTのレシピ「SORACOM IoT DIY レシピ」の中から、ラズパイ入門者向けの創作アイデアを3つご紹介します。

まず1つ目は、ラズパイに市販のWebカメラを取り付けて作る「遠隔カメラ」です。定点撮影した画像をスマートフォンで見ることができます。例えば家庭内菜園の育成記録や、倉庫内の在庫棚の確認に使えるでしょう。

ラズパイとWebカメラで作る遠隔カメラの外観 ラズパイとWebカメラで作る遠隔カメラの外観

ラズパイの標準的なOS(Raspberry Pi OS)では、USBポートに接続したWebカメラが利用可能です。そしてOS内にはsystemdというミドルウェアによるタイマー機能があるため、これらを利用して定時撮影を実現しています。

画像はモバイルデータ通信でクラウドへアップロードするため、ラズパイの設置場所は自由です。あとは電源となりますので、準備はお忘れなく。そして、画像を閲覧するためのアプリケーションも、この例ではIoTデータのダッシュボード サービス「SORACOM Lagoon」を利用することで手間なく構築できます。

レシピではソースコードから設定内容まで全て公開されています。撮影間隔の変更や画像のアップロード先を変更して、クラウドを活用するといった改造や発展も可能です。ラズパイで作る便利なデバイスの第一歩としておすすめです。

ICカードリーダーでセルフ勤怠管理

続いては、市販のICカードリーダーとICカードを組み合わせたタイムレコーダーです。
SuicaといったICカードをかざすことで、タイマーをON/OFFする仕組みです。記事内では学習記録システムとして紹介されていますが、応用としては、テレワークのセルフマネージメントとして勤怠記録にも活用できるのでは無いでしょうか。

ラズパイとICカードリーダーで作るセルフ勤怠管理 ラズパイとICカードリーダーで作るセルフ勤怠管理

技術的にはNode-REDという、GUIでプログラミングができるツールを利用しています。初回のみICカードリーダーの認識設定が必要ですが、それ以外はプログラムを書かずに作ることができ、デバイス制御の容易さを体験いただける内容です。

超音波距離センサーとスピーカーで店番ロボット

最後は、超音波センサーに連動した音声応答を行う店番ロボットです。クラウドへのデータ収集だけでなく、現場の状況に応じた応答をする点が特徴です。

超音波距離センサーとクラウド連携で作る店番ロボット 超音波距離センサーとクラウド連携で作る店番ロボット

超音波センサーで物体との距離を計測し、一定の距離以内に入ったことを検知、その反応を基にクラウドで音声を作成してラズパイに取り付けたスピーカーで再生します。昨今の事情から、非接触型のインターフェースが求められることもありますが、その構築例として利用できます。

レシピでは計測点は1つですが、例えば2点の計測で手をかざしている様子や人の流れの方向を検知して、サイネージのナビゲーションに使うことが考えられます。また、応答データの作成にクラウドを利用することで、例えば多言語での応答といった拡張が可能です。

そのアイデアをラズパイで形に!

ここで紹介したのは一例ですが、ラズパイを使うことで、Webやクラウドの技術だけでも簡単にIoT開発できることを感じていただければ、うれしく思います。世の中には既にスマートスピーカーやスマートロックといったIoT製品があり、とても便利ではあります。しかし、ふとした瞬間に「もう少し、こうだったらいいのに」と思った時がチャンスです。そのアイデアを、ラズパイで形にしてみてください。

ソラコムでは現在「ラズパイコンテスト」を実施中です! ラズパイとSORACOMを用いて「生活を便利に」「業務を改善」した実例の中から、優秀な作品に賞品をお送りするコンテストとなっています。「こうだったらいいのに」を形にした、皆さんの作品をお待ちしております!

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