「ハクト」インタビュー
「ハクト」インタビュー(前編)月面で無人探査機を走らせたい——国の宇宙開発よりも先に
全部込みで15億円の宇宙開発プロジェクトです
——2013年に日本単独のチームとなり、運営会社として株式会社ispaceを設立されたと聞きました。民間企業として宇宙開発に挑まれているわけですが、プロジェクトを進める難しさとはどういったものなのでしょうか?
「やりたいことを実現する技術やエンジニアもそれなりにそろっていると考えています。課題といえば、やはり“資金調達”ですね。宇宙開発というだけでリスクが高いという先入観を持たれてしまうので。
2009年にチームが立ち上がった当初は、プロジェクトの意義や価値を理解してもらうために、投資家や宇宙に興味のある方を100人くらい東大に集めてセミナーを開催しました。これまでに調達が難しい局面も経験しましたが、最近はいろんな方にコンタクトをとることで調達先も確実に広がっています。活動しやすくなってきたのは確かですね。
目標としては、調達額の約8割をメディア価値として企業から集め、残りはクラウドファウンディングなどを活用して個人から募り、将来のビジネス価値に期待する投資家からも株式調達で確保する計画です。認知を広げファンを増やすために、プロモーション活動にも力を入れています。全国各地で開催している子ども向けのイベント“ローバー・チャレンジ”もその一つで、プロトタイプのローバーを会場に持ち込んで月面探査を疑似体験してもらっています。ワクワクする気持ちを分かち合えるので、我々のモチベーションにもなっています。
必要な資金は最低15億円と試算しています。ローバーの開発費や人件費、月面に運ぶロケットの打ち上げ費など全てを含めたコストですが、宇宙開発としては安いと思います。
今回は大規模なプロジェクトではなく、ローバーに与える機能をGoogle Lunar XPRIZEでのミッション達成に絞って開発しているのも要因のひとつです。
質量は最大でも2キロ程度の軽量でコンパクトなものに。ただ、これが民間ではなく国家プロジェクトとなると、コストは簡単に一桁上がってしまうと思います。国が行えばさまざまなステークホルダーの意見を取り入れることになりますし、成功率を上げるために色々な機能を付け加えていくので、結果的にローバーの質量が10キロ、20キロと増えていく。そうなると、例えばロケットの打ち上げ費も運ぶモノの質量に比例して増えていくので、コストがどんどん高くなっていくわけです。
日本で作ったローバーを月面で走らせること、それを国による宇宙開発よりも先に成し遂げることは、非常に大きな影響力を与えるはずです。
そして、宇宙船が飛び交う世界を作るためにも民間の宇宙開発を加速させたい。
Google Lunar XPRIZEへの参加は、それを実現にこぎつける確実なステップになると思っています」
(後編に続く)