羽ばたき飛行機製作工房・高橋祐介インタビュー
子供から大人まで夢中になる! 鳥のように飛ぶ「羽ばたき飛行機」
誰も見たことのないオープンソースの飛行機を作ろう
高橋さんが羽ばたき飛行機をつくるきっかけになったのは、約10年前にインターネットで偶然見かけたラジコン式の羽ばたき飛行機だった。
化学メーカーでシステムエンジニアとして働く高橋さんだが、機械設計は完全に専門外。それでも好奇心から、頭の中でイメージした飛行機を形にすべく試作を始める。
「他にない、誰も見たことのないオリジナルのものを作ろうという思いは初めからあったので、ネットで見たものとは違った機体を試行錯誤しながら作り始めました」(高橋さん)
開発当初はCADも使えなかったため、手作りで模型を作り改良を重ねながらバリエーションを増やしていった。
2010年に東京で開催されたイベント「空フェス!」で、自作の羽ばたき飛行機を公開したのをきっかけに羽ばたき飛行機開発者として多方面で活躍するようになる。
「『空フェス!』に出たことで、学研の方々や八谷和彦さん(メディア・アーティストで東京藝術大学准教授、個人的に飛行装置を作る「OpenSky」というプロジェクトで有名)と出会い、羽ばたき飛行機ワークショップを開いたり、大人の科学マガジンの付録として「デルタ・ツイスター」を採用いただいたりと、ご縁が広がりました」
その後、クリス・アンダーソンの「MAKERS」(NHK出版)に出会い、3Dプリンタや3D出力サービス、無料で簡単に扱える3D CADの存在を知った高橋さんは、羽ばたき飛行機の制作にデジタルツールを導入。制作した3D CADデータも公開するなど、メイカーズとしての活動が加速する。
「Autodesk 123D designとか、触ってみるとすごく簡単にモデリングが出来て、どんどん作れるようになりましたね。デジタル化することで、一品製作だった機体を複製・配布できるようになったのも大きいです」
以降、Make: Tokyo Meeting(Maker Faire Tokyoの前身イベント)にも出展し、羽ばたき飛行機を通じてたくさんの人と触れ合うきっかけが生まれ、ワークショップやニコニコ学会βにも登場し高橋さんの飛行機に多くの人が驚いた。
また、ブログを開設し飛行機の設計データや飛行している様子の動画をアップしたことで、メディアからも注目されるようになり、テレビ番組で紹介される機会も生まれた。
「Maker Faireのブースに来られる方は毎年増えていて、大人から子供まで熱烈な反応があります。2013年のMaker FaireではAutodeskのカールCEOがブースに来てくれて、『今年のMaker Faire Tokyoで一番おもしろかったのは羽ばたき飛行機だ』とおっしゃってくれたのは、とても嬉しかったですね」
羽ばたき飛行機を通じて、世界が広がった高橋さんが見つめる先には、さまざまな目標がある。その一つは世界中で羽ばたき飛行機が浸透すること。CADデータや制作方法を全て公開しているのもそのためだ。
ものづくりのアイデアやデータを共有するウェブサービス“Instructables.com”に公開した英語版製作マニュアルは1週間で35,000アクセスを記録するなど、海外にも高橋さんの羽ばたき飛行機は広がりつつある。
「手作りで作っていた時は写真しかデータがありませんでしたが、3D CADでデータをアップして、作り方も英訳すれば誰でも作れるようになりますし、(3Dプリンタの)RepRapのようにオープンソースのハードウェアになる事を目指しています」
また将来は有人飛行が可能な羽ばたき飛行機も実現させたいと思っている。
「もともと有人飛行は考えていませんでしたが、メーヴェを作った八谷さんからも『次は高橋さんの番でしょう』ってハッパをかけられ、周りの方に刺激されてその気になりました(笑)。新素材やハイブリッド技術などを使えば、実現できるはずです。」
世界中で高橋さんが設計した飛行機が飛び、自身も羽ばたき飛行機に乗って空を飛ぶ未来——その日に向かって、高橋さんは今日も羽ばたき飛行機を作っている。