XYZプリンティングジャパン サイモン・シェン インタビュー
「2030年に会いましょう」台湾の巨大EMSが3Dプリンタで描く未来の日常
2014年3月の「ダヴィンチ 1.0」発売以降、四半期に1製品のペースで次々と新しい3Dプリンタを発表し続けるXYZプリンティングジャパン。世界3位のEMS(製造受託)大手、新金宝グループを母体に持ち、EMSで培った生産技術を武器に2015年に入ってからも20万円台の光造形方式3Dプリンタ「ノーベル 1.0」、そしてフード3Dプリンタと次々と新製品を開発している。
受託製造事業がメインの彼らがなぜ自ら3Dプリンタメーカーを立ち上げたのか、3Dプリンタは私たちの日常をどう変えていくのか。新製品の発表会で来日した新金宝グループCEO兼XYZプリンティングジャパン 代表取締役のサイモン・シェン氏にお話を伺った。(聞き手:佐々木千之、越智岳人)
——これまで一般消費者向けに低価格3Dプリンタを発売してきたXYZプリンティングジャパンが、「ノーベル 1.0」のようなプロシューマ向け製品を開発した背景を教えてください。
サイモン・シェン氏「これまで発表したダヴィンチシリーズはFFF(熱溶融積層)方式の3Dプリンタですが、FFF方式はたくさんあるプリント方式の一つでしかありません。私たちはFFF方式に限らずさまざまな技術の3Dプリンタを開発していくつもりなので、その一つとしてSLA(光造形)方式のノーベルを今回発表したのは、ごく自然な流れだと思います。
SLA方式のプリンタは欧米でも高価で、利用しているのは宝飾品やおもちゃのデザイナーといったプロユーザーが中心です。私たちのノーベルも彼らのようなプロたちが使うことをイメージしています。
それとは別にFFF方式の3Dプリンタでいろいろなプリントを楽しんだユーザーが、じゃあもっといいものを作りたいと思ったときにノーベルに移行する可能性もあると思います」
——税込み 22万円台というSLA方式としてはかなり安い価格に決めた経緯は?
「EMSが母体にあるので一般的なメーカーと比べて材料コストを非常に安く抑えられます。一方でメーカーとして適切な販売価格を設定にするのが非常に苦手です。だから材料コストに対して合理的な利幅で販売すればいいと思いました。
価格を抑えることでユーザーにとって人生初の3Dプリンタが当社のものであればと思った結果、22万円台という価格になりました。
私たちのミッションは、『どのようにして消費者を3Dプリンタに関わってもらうか』ということです。多くの人々がまだ『3Dプリンタは見たことも聞いたこともあるけど、高いから買わない』という状況の中で、リーズナブルな価格で誰もが使えるものを販売し、それが皆さんの家庭に普及すれば、それで成功だと思っています」
——価格についてはCES2015でもかなり反響があったようですね。
「今回ノーベルがCESで受賞したのも、これだけ繊細なものをプリントできるプリンタがリーズナブルな価格で買えるということで、3Dプリンタの時代が到来したと印象付けることができ、3Dプリンタが人々の生活に新しい発展をもたらすことを期待されているからだと思います」
——日本でも政府や自治体、多くの企業が、3Dプリンタをどのように活用、普及させるか議論しています。サイモンさんはどう考えているのですか?