あの名作の舞台裏にいたMaker
「志村!うしろ!」の後ろにいたデザイナー 山田満郎の「全員集合」舞台デザイン
全員集合の舞台はいくつかの定番の仕掛けがあった。コントが終了すると30秒程度でセットが舞台袖に回収され、後方に控えた生バンドが登場、ゲストのアイドルや歌手の歌にスムーズに移る。視聴者を飽きさせない工夫はコントにとどまらなかった。
コントの名物シーンの一つ「屋台崩し」は全て緻密な計算と、入念なテストを経て生放送で披露された。ボヤや停電などのトラブルはいくつかあったが、放送期間中、一度も事故が起きることなく最終回を迎えたのは、奇想天外な仕掛けを安全に実現するという高いレベルの要求に応えつづけた現場の努力があったからだ。
舞台上で本物の自動車が家に飛び込むコントでは実際に車を安全に落とすテストが繰り返し行われた。当時の実験の様子を、生前山田さんは文章に残している。
舞台で本物の自動車を飛ばせるか?というのが最初の単純な発想でした。なにしろ重さ1トンの物体が飛んで落下するので、どの位の距離が飛べるのか?どのくらいの落差なら可能か?どの位の荷重がかかるのか?等の色々な未知の問題点がありました。舞台袖の関係で車の助走距離は最大4間(編集部注、約7.2m)しかとれないというのが前提にあります。
今迄舞台でやったという話を聞いたことがないので、とにかくどうなるか一度実験をしてみようということになり、本番10日前の18日に緑山のスタジオのオープンに雨の降る中セッティングしたのですが車が雨でスリップしてその日は中止。翌19日に再度挑戦。飛んだ結果が写真の様に下の台がバラバラになるという惨々たるありさまでした。(ドライバーは車専門のスタントマン)
(山田さんの手記から引用。原文ママ)
最終的には1平方メートル当たり1トンの荷重に耐えられる鉄骨を組み、それをいかに隠すかにポイントを置いてセットを組み、本番で無事成功。今でもファンの間で語り草になるコントの背景には、地道な検証の積み重ねがあった。
今回の展示を企画した山田さんの次男、山田太平さんも多忙を極めた父の仕事を見守り続けた1人だ。
「父は大変な緊張の中で仕事をしていたと思います。胃が痛くなるのは日常茶飯事で、時には吐いたりしているのも見ていました」
展示会の反響を受け、自宅に保管されている資料を何かしらの形で公開したいと山田さんの遺族は考えている。
具体的な目途はたっていないが、多くの人の前に山田さんの図面や資料が再び展示される日も、そう遠くないだろう。
資料撮影:水戸秀一
資料提供・取材協力:山田満郎さんのご遺族、TBS
参考資料:8時だョ!全員集合の作り方—笑いを生み出すテレビ美術 山田満郎著、加藤義彦取材・構成 双葉社刊