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年末特集2017

日本の製造業とハードウェアベンチャー、双方の強みを生かした協業を考える【年末特集】

日本の製造業とスタートアップを支える行政の取り組み

北:スタートアップを支援する政策を考えている中で、豊田市からお話がありました。豊田市は自動車産業で有名なものづくりの街ですが、自動車の電動化という流れの中で、新規事業を考えなければ生き残れないという問題意識を、豊田市全体が持っています。そこで、豊田市のオープンイノベーション支援事業を受託し、豊田市内の中小・大手自動車部品メーカーと東京のベンチャーをマッチングし、「IoT」「AI」「ロボット」の3分野で連携プロジェクトを立ち上げました。

——具体的な事例をご紹介いただけますか?

北:「IoT」分野では工業用ミシンをIoT化して生産性を向上するプロジェクトが、「AI」分野ではメーカーの製造ラインの検査工程を機械学習を利用して自動化するプロジェクトが採択されました。こうした事例は、製造業側でも業務改善・効率化といった大きなメリットが見込まれる分野になります。

製造業と組むことでスタートアップが急成長できる

——先ほど日本の製造業の強みとして技術力や市場占有率の高さというお話がありましたが、一方で大企業と組むことの難しさはなんでしょうか?

北:特に大企業になると、手続きや意思決定に日数を要すなど、スタートアップとはまったく違う部分が多くあります。ただ、スタートアップが急成長を遂げるために、すでに大きな市場を持っている日本の製造業は重要な協業相手になると考えています。

また、製造業と組むことのメリットとして、類似したプロセスを持っている企業がたくさんあるという特徴があります。スタートアップは、最初から大手と組む必要はなく、動きの良い中堅企業と組んで、システムや装置をがっちり作り、完成したものを横展開することで大きな市場が見えてきます。

豊田市の事例でいえば、IoTミシンは従業員100人くらいの自動車部品メーカーであるトヨタケ工業と、10人弱のハードウェアスタートアップのロビットが組んで開発を進めていますが、この規模だとプロジェクトの進行が速いです。この技術をパッケージ化、ソリューション化して、同じような悩みを抱える製造業に横展開していこうというビジョンを持ちながら進めており、有望なプロジェクトになっています。

もちろん、ベンチャー側からすると知名度がある大企業と組みたいという考えもありますし、スケール含めてどちらが良いのかという答えはまだ見えていません。

大企業がベンチャーの技術の買い手となる構図が必要だという 大企業がベンチャーの技術の買い手となる構図が必要だという

——最終的なゴールはどのようなものだとお考えですか?

北:製造業のオープンイノベーションとして考えれば、製造プロセスの改善だけではなく、スタートアップと製造業が連携して最終製品を作るという動きも活発化してほしいと思いますが、ここはまだ事例が少なく、どうなっていくのかよく分かりません。

ただ、テクノロジー系のスタートアップが、自社で最終製品を作って事業化していこうとすると、シード期から10億円単位の資金と、数十人規模の開発体制、その他にも無数の資源が必要になります。これはもう、単独で事業化するのはほとんど不可能な話で、大企業や中小企業、VCや政策まで、あらゆる主体が総出で支援していく必要があります。

私自身は、政策に関するところしかタッチできませんが、少しでもハードウェアスタートアップが成長しやすい世の中になるよう、頑張っていきたいと思います。

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