Shojinmeat Projectインタビュー
筋肉細胞を培養して作る食肉“純肉”の開発に挑む——世界が注目するDIYバイオハッカー集団「Shojinmeat Project」
個人や小規模なグループが自宅などでバイオテクノロジー研究を行う“DIYバイオ”のコミュニティが日本でも増えてきている。2014年に発起人の羽生雄毅氏を中心に有志で立ち上げた「Shojinmeat Project」もそのひとつだ。研究者、バイオハッカー、学生、イラストレーターらが集まり、大企業や政府機関ではなく、一般の人が主役の「シチズンサイエンス」の立場からオープンイノベーションを促進している。
動物を殺さずに筋肉細胞を育てて作る食肉——「純肉」の実用化を目指すために、どのような活動をしているのか。羽生雄毅氏とメンバーの杉崎麻友氏、岡田未知氏、田中雄喜氏、金子颯汰氏にお話を伺った。(撮影:加藤甫、川島彩水)
純肉開発はSFの世界だけじゃない
世界中に広がりを見せ、日本でもDIYバイオの研究する人たちが徐々に増えてきている。ハッカースペースはDIYや電気/機械系のものづくりに利用されていたが、最近はバイオ研究にも活用されはじめている。オープンイノベーションの一種、Makerムーブメントの「ものづくり」に対して、DIYバイオは「ナマものづくり」。研究室の中だけで行うバイオ研究ではなく、だれでも参加できるオープンな研究にする活動に変化しているのだ。
Shojinmeat Projectも日本のコミュニティのひとつで、細胞培養や研究に必要な実験器具の作り方を情報公開して世界から注目されている。今回お話を伺ったのは、FabCafe Tokyoに頻繁に集まるメンバーだ。普段は、大学生、高校生、会社員とさまざまな人たちがDIYバイオを通じて活動している。
——Shojinmeat Projectを始めたきっかけは? SF作品の影響もあるのでしょうか?
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羽生さん
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「これといって特定のSF作品に影響を受けて始めたわけではなく、いろいろなSF作品に共通している宇宙船や食料生産方法がありますが、その共通部分をひっくるめて、自分自身の考えるSFの世界を作ろうと思ったのがきっかけです。Shojinmeat Project自体は同人サークルみたいなもので、それぞれ関わる動機がみんなバラバラですが、それで良いと思っています。」
——普段はどのように活動していますか?
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杉崎さん
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「Shojinmeat Projectは、世界中にメンバーがいて、東京勢の一部のメンバーは毎週火曜日にFabCafe Tokyoに集合しています。そこにメンバーが誰かしら集まっているので、活動の進捗や実験で困っていることなどを情報交換し、他の地域のメンバーとは、SlackやTwitterを活用して情報交換しています。
現在は実験室ではなく「家」という環境の中で細胞を増やそうとしていて、やり方は全部公開します。自分の実験を記録した実験ノートの写真を撮影して、観察データ、細胞の写真をブログやTwitterで発信しています。他のメンバーも同じように情報を公開してくれるので、こういった活動をする人が増えてくると情報が蓄積していって嬉しいですね。」
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田中さん
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「細胞を増やすために有精卵を利用するのですが、有精卵や培養に必要な材料、物資もメンバーで共有しています。自宅で卵をインキュベーターに入れ、12日齢ほどたったものを、細胞が死なないようにお湯を入れたペットボトルにホッカイロを巻いて保温しながら、メンバー同士で手渡ししています。」
世界中の研究者や著名人も参加する
——Shojinmeat Projectのメンバーは何名くらいいますか?
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羽生さん
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「プロジェクトメンバーと言っても、基本的におのおのが好きなように活動しています。頻繁に活動しているメンバーと遠巻きに見ているメンバーが存在します。全部含めると参加者は50人以上になります。」
——海外からも問い合わせはありますか?
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羽生さん
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「SlackにEnglish Channelという英語版を作って公開し、南アフリカ在住のジェイさんにChannelの管理をお願いしたら、瞬く間にメンバーが増えまして、世界中の研究者レベルから著名な方、細胞農業業界で最も有名な団体「NEW HARVEST」の方まで参加しています。」
——ウェブサイトでメンバー募集をしていますが、すぐにSlackに参加できますか?
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羽生さん
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「English Channelは公開しているリンクから、そのまますぐに参加できますが、国内はイベントや実際に会ってからSlackに招待することが多いです。距離やタイミング的に会うのが難しい場合は、Skypeなどのオンラインでお話をしています。京都のMTRL Kyotoや北九州で仲間を見つけて活動している人もいますし、NT京都(ニコニコ技術部が母体の、京都で行われる展示交流会)で知り合った北海道のメンバーは自宅用培養装置を開発しています。」
——田中さんの自宅がラボになっているとか?
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田中さん
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「都内に一人暮らしで、いつでも実験できるように部屋の中は、実験器具の倒立顕微鏡やインキュベーター、クリーンベンチ、冷蔵庫を置いています。実験器具は場所も取るし、高さもあって、6畳の部屋を占領しているような状態ですが、この実験器具をきっかけにShojinmeat Projectや同じDIYバイオを楽しんでいる人たちとつながっています。」