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プロフェッショナルに選ばれる製品を届けたい——米Formlabsが考える3Dプリントの今

米Formlabsが新たな製品を積極的に発表している。2021年には粉末焼結積層造形(SLS)方式3Dプリンター「Fuse 1」、2024年には光造形方式3Dプリンターの最新モデル「Form 4」を発表。並行して自社開発によるレジンの充実も図っている。

数万円で手に入る光造形方式3Dプリンターも珍しくない中で、Formlabsはどのような考えのもとで新しい製品を開発しているのか——。Formlabsの最高製品責任者(CPO)David Lakatos氏らに聞いた。

800人体制で全世界に3Dプリンターを提供

Formlabs APAC General Manager Michael Agam氏、最高製品責任者 David Lakatos氏、最高収益責任者Nick Graham氏(左から右) Formlabs APAC General Manager Michael Agam氏、最高製品責任者 David Lakatos氏、最高収益責任者Nick Graham氏(左から右)

——「Form 4」は造形速度の大幅な向上や造形成功率、使い勝手など、さまざま面で「Form 3」からのアップデートが見られました。どのようにユーザーの声を拾いながら、製品開発に役立てているのでしょうか。

Lakatos氏:Form 4では造形の解像度や正確性、製品に対する信頼性など、さまざまな面でアップデートしていますが、あらゆるルートでユーザーのデータやフィードバックを収集し、開発に反映しています。例えば、オンラインでプリンターの稼働状況がモニタリングできるDashboard(ダッシュボード)というサービスを提供していますが、全ユーザーの70%が利用しています。ここで収集したプリンターの稼働状況や造形データは製品開発にダイレクトに生かされています。

またWebサイトに寄せられたユーザーからのフィードバックや問い合わせは本社の開発部門のSlackチャンネルにも共有されますので、サポート面でも何か問題があれば迅速に対応できる体制が整っています。

——レジンについても聞かせてください。どのような体制で、多種多様なレジンを自社で開発しているのでしょうか。

Lakatos氏:約800人の従業員のうち約250人がエンジニアで、そのうちの約50人がレジン開発に従事しています。オハイオ州の企業を買収したことが、レジン開発における大きな転換点だったと思います。(筆者注:FormlabsはレジンのサプライヤーだったSpectraを2019年に買収している)

現在、レジンはおおむね1年から1年半のサイクルで開発していますが、難易度の高いレジンであれば、もう少し長いスパンで取り組みます。現在はさまざまな要望がユーザーから寄せられる中で市場規模と実現性を照らし合わせながら製品化を検討しています。

最も製品化に苦労したレジンを挙げるとするならば、New Balanceとのコラボレーションによって開発した「Reboundレジン」です。スニーカーのソール用に開発したレジンで、耐久性や弾力性などNew Balanceが要求する厳しい基準にこたえるために2年の月日を要しました。このレジンの開発を通じて製品の信頼性や品質向上に対する水準も上がり、他社とのコラボレーションの幅を広げるきっかけにもなりました。

FormlabsのReboundレジンを使ったNew Balanceのスニーカー「FuelCell Echo Triple」(画像出典元:New Balance) FormlabsのReboundレジンを使ったNew Balanceのスニーカー「FuelCell Echo Triple」(画像出典元:New Balance

作って稼ぐ人のソリューションでありたい

——近年は光造形方式の3Dプリンターも10万円以下で買えるモデルが登場するなど、さまざまな企業が参入しています。「Form 1」を発表した2013年とは状況も大きく変化していると思います。個人でも手が届く製品を手掛けてきたFormlabsから見て、現在をどのように捉えていますか?

Lakatos氏:競合企業が増えることは良いことだと思います。ユーザーにとっては選択肢が増えますし、何より技術が成熟していることの証明ともいえるわけですからね。安価なものからハイエンドのものまで選択肢が増えている中で、私たちは常にプロフェッショナルを対象にしています。ここでいうプロフェッショナルとは規模に関係なく、自分が作ったもので稼いでいる人を指します。私たちは個人や小さなチームであっても手が届く製品を開発し続ける一方で、入手しやすい環境を整えています。

また、プロフェッショナルから選ばれるメーカーになるために、私たちはプリンターだけでなくソフトウェアやレジン、サポート体制なども充実させています。ユーザーはプリンター単体を求めているのではなく、3Dプリントによるソリューションにお金を払っていると考えます。少なくとも私たちは、プロフェッショナルが求める信頼性やスピード、品質やサポートなどの面で他社とは差別化できていると考えています。

——最後に、現状ではどのようなプロフェッショナルに支持されているか教えてください。

Agam氏:どの地域でも製品の設計やデザインに関わるプロフェッショナルには支持されていますね。とりわけヘルスケアや歯科関連での利用は伸びています。日本に関してお話しすると、フィギュアの造形に活用されているのがユニークな事例でしょうか。中国など他のアジア圏でも模型のパーツ製造にForm 3が使われていて、用途や規模を問わずプロフェッショナルが3Dプリントを選ぶ時代が来ていると感じます。

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