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英ケンブリッジ大、電子デバイスを印刷できる機能性インクを開発

英国ケンブリッジ大学グラフェン・センターの研究チームが、通常のインクジェット印刷技術を使いながらレーザーや光エレクトロニクス・デバイスの大量生産を可能にする、新しい機能的なインクを開発した。このインクは、グラフェンと同様に2次元材料として注目を集めている黒リンの薄片から構成され、光電子素子として高い機能性を発揮するだけでなく、非常に均質で安定性の高い回路を印刷することができる。研究成果は、『Nature Communications』誌に8月17日に公開されている。

黒リンは、電荷キャリアの移動度が高く、また可視領域および近赤外領域に対応するバンドギャップを有するなど、電子デバイスや光電子デバイスにとって有用な性質を持っている。しかしながら、空気中の水分と反応し易く環境安定性に乏しいため、2次元材料としての黒リンの実用化はあまり進んでいなかった。

インペリアル・カレッジ・ロンドン、フィンランドのアールト大学、および中国の北京航空航天大学と浙江大学との共同研究チームは、黒リンインクの化学組成を精細に最適化し、複雑に競合する流体効果をバランスさせて、安定性の高いインクを得ることに成功した。例えば、インクジェットプロセスではドロップレット(液滴)が均一な状態で乾燥することが品質上重要だが、黒リンの微細フレークが乾燥過程で液滴の周辺に環状に集まるコーヒーリング現象を起こすという課題があった。研究チームは、液滴中に表面張力の差によって生じる「マランゴニ対流」を発生させ、黒リンのフレークを周辺部から再循環させることでコーヒーリング現象を抑制し、均質な印刷品質を実現した。

論文の筆頭著者のGuohua Hu氏は「この機能性インクは、通常のインクジェット印刷技術を用いてプラスティックを含む広範な基板上に印刷することができ、大気環境で劣化しない。これは、黒リンをベースとしたレーザーや光エレクトロニクス・デバイスの高速印刷および大量生産を可能にする道を切り拓くものだ」とその成果を説明する。

研究チームは、「黒リンインクは、新材料を活用した新しい光通信デバイスに顕著な進展をもたらす」とし、従来のシリコン基を超えた波長領域まで拡大できる高感度光検出器や、レーザー装置用の超高速光学シャッターとして機能する非線形光学デバイスなどを挙げている。

fabcross for エンジニアより転載)

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