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自治体発アクセラレーション——豊田市がスタートアップと地元企業によるマッチング成果を発表

愛知県豊田市にある、工房付きコワーキングスペース「SENTAN」で、地元企業と県外のスタートアップによる協業プロジェクトの成果発表会が2018年2月2日に開催された。 当日はIoT、AI、ロボットをテーマに、東京のハードウェアスタートアップ2社と豊田市内の企業4社による3プロジェクトの成果とプロトタイプが披露された。

これは豊田市と、とよたイノベーションセンターによる「製造業とベンチャー企業のマッチング事業」によるもの。豊田市内の製造業企業と、全国のスタートアップ、ベンチャー企業によるオープンイノベーションを支援・推進する取り組みで、豊田市が応募企業をマッチングし、合同のプロジェクトとして採択し、約半年の開発期間を経て成果発表会を迎えた。

プロジェクトは製造業の生産性向上と社会課題解決を目的にしたもので、豊田市内の企業4社と市外のスタートアップ2社による3つのプロジェクトの成果が披露された。

工業ミシンのIoT化プロジェクト

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自動車用のシートカバーを製造するトヨタケ工業と、東京に拠点をおくハードウェアスタートアップのロビットは、工業用ミシンの稼働状況をセンシングし、データを可視化し解析することで、生産性を向上させるプロジェクトを発表した。

トヨタケ工業では、自動車用シートカバーの裁断から縫製までを人の手で行ってメーカーに納入している。工場のある地域では少子高齢化による働き手不足が加速する一方、メーカーからは多品種少量生産の需要が高まり、製造の難易度は年々高まっている。 同社では生産性を改善するため、各プロセスの作業時間を職人がキッチンタイマーを使って自分で計測集計しているが、正確性を欠くことに加えて、膨大なデータ集計に過大な負荷がかかることから、これまで十分なデータ分析と改善がなされていなかった。

photo トヨタケ工業代表取締役社長の横田幸史朗氏(左)とロビットCEOの高橋勇貴氏(右)

このような課題をもつトヨタケ工業に対して、CNCの運用をIoT化するシステムの開発実績があるロビットは、既存の工業用ミシンの稼働状況を計測するセンシングユニットを開発した。

photo センシングユニット(左)と、スタッフのIDを読み取る端末(中央の白い機械)。センシングユニットには数値をその場で補正できるテンキーも接続できる。

ミシンの稼働状況だけでなく、足元のペダルを踏んだ回数といった目視では計測が難しいデータもスタッフごとに計測して集計してブラウザー上で可視化、作業員の負担を増やすことなくミシンの稼働率向上に寄与できるという。

photo 集計したデータはブラウザー上で確認できる

トヨタケ工業では10台の工業用ミシンにセンシングユニットを導入したが、今後は全台へと拡大する予定だ。そしてロビットは、センサーを追加して計測可能なデータを増やすなど製品のブラッシュアップを図り、縫製現場の生産性を向上させたい企業向けのソリューションとして事業化する予定だ。

機械学習を用いた自動外観検査装置の開発・検証プロジェクト

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自動車部品の製造工程において、特に外装部品表面に付着した異物や傷などを検査する「外観検査」は検査員の五感に頼る点が多い。少子高齢化の加速によって、検査員の確保も年々難しくなっており、外観を含めた検査工程の自動化は自動車部品メーカーにとっての重要な経営課題だ。しかしながら一般的に外観検査用のシステムは高額で、自動化に移行できない企業も少なくないという。

photo 小島プレス工業生産技術部の内田敏博氏(左)と協豊製作所技術開発部の滝正臣氏(右)

先の工業用ミシンのプロジェクトにも採択されたロビットは、豊田市内で自動車部品の製造を手がける小島プレス工業と協豊製作所の協力のもと、既存の検査装置と比較して安価な検査用ロボットアームを開発した。

外観検査のみに用途を絞ることで製造コストを抑えたロボットアームを使い、機械学習と画像処理アルゴリズムを活用した検査システムで、2社から提供を受けた部品を実際に検査した結果、精度99%を達成している。

photo ロボットアームによる検査のデモ画面。目視では確認できない微細な傷や付着物を検出できるだけでなく、塗装面の上に付着したホコリなど、許容すべきゴミはフィルタリングして検出しないという設定も可能だという

ロビットは、自社製品の生産を国内の町工場と進めることが多く、その際に人手不足や後継者問題、限られた中での設備投資といった、さまざまな町工場の課題を直接聞く機会があった。そうした製造業が抱える課題に自分たちの技術を活かし、新しい事業を創出したいという背景から、豊田市の事業に応募したという。

今後は2つのプロジェクトとも事業化に向けて改良を重ねながら、製造業の課題解決に役立てたいと、ロビットCEOの高橋勇貴氏は語った。

モニター移動ロボット「moniii」

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さまざまな業種向けにロボットを開発しているスタートアップ「otuA」と、産業機械の設計・製造を手がける東亜製作所は、商業施設や駅、学校といった不特定多数の人が行き交う施設向けの大型モニター付きロボット「moniii(モニー)」を開発した。

360度カメラと50インチの大型モニターが搭載された移動式ロボットで、状況に応じて必要な情報を伝達できることを目的にしている。

photo otuA代表の星野裕之氏(左)と東亜製作所代表取締役社長の光岡主税氏(右)

otuAの星野裕之氏によれば、人手不足に悩む商業施設向けに開発したロボットで、既存の看板や案内ボードのように定位置にあるのではなく、人の動きをカメラで見て適切な場所に移動することで、情報を必要としている人に効率的に伝達する効果が期待されるという。

ソフトウェア部分はデジタルハリウッド大学の学生が開発し、同大学で今年3月から実証実験も予定している。発表時点ではプロトタイプということで操作は有線コントローラーを用いているが、将来的には自律走行できるよう、開発を継続していくとしている。

photo 今回の会場になった「SENTAN」は消防署だった建物をリノベーションした施設で、1階に工房、2階にコワーキングスペース、3階にイベントスペースがある

豊田市によれば、今後も地元企業とスタートアップとのマッチング事業は継続していくとのことで、成果発表会には市内外から製造業関係者が130名以上参加し、注目度の高さが伺えた。

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