米ダートマス大、3Dプリント後に造形物のサイズや色を変えられる「スマートインク」を開発
2018/04/20 16:30
米ダートマス大学の研究チームは、3Dプリント後に造形物のサイズや色を変えられる「スマートインク」を開発した。
スマートインクを使って3Dプリントした造形物は、熱や化学物質など外部からの刺激に反応して大きさや色を変えることができる。3Dプリント後に形状を変形させることが可能な立体物を作成する技術を「4Dプリンティング」と呼ぶが、4Dプリンティングにより生体臨床医学からエネルギー産業まで幅広い分野の精密部品を低価格で製作できるようになる。
スマートインクは、ポリマーベースの「vehicle」を使用しスマート分子システムを印刷用ゲルの中に結合させて作る。vehicleを使うことで、分子システムの機能がナノスケールからマクロスケールへと変わるのを可能にしている。
3Dプリント方式の多くは光硬化性樹脂(レジン)を使用するため、造形物は柔軟性に欠けた固いプラスチックとなる。造形物の分子構造はふぞろいで、素材の分子特性は反映されない。
新しい方法では特定の分子整列や機能を保持できるようにする。プリント前後のプロセスで新しい技術を組み合わせることで、研究チームはプリントした造形物を元のサイズの100分の1にしつつ解像度を10倍にすることができた。ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition(アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション)」に掲載された研究論文によると、スマートインクを使うと解像度約300ミクロンでプリントした造形物が、最終的には解像度30ミクロンになる。
研究論文の筆頭筆者Longyu Li助教によると、スマートインクを使うと本来は10万ドル以上する高価な3Dプリンターを必要とするような造形を1000ドルの3Dプリンターでできるようになるという。
スマートインクは、外部要因に反応して形状を変化させるソフトロボティクスシステムのようなスマートデバイスなどに応用できる可能性がある。スマートインクを使った造形物は、自律的に変化するようプログラムされた分子デザインを有しており、例えば、化学燃料に触れると形状が変わり、光を当てると色が変わる。
論文の共著者の1人であるQianming Lin氏は「複数の素材を3Dプリントに使えるので、異なる分子を結合してよりスマートなオブジェクトを作ることも可能だ」と述べている。