多品種少量生産3Dプリントシステム「Figure 4」でマス・カスタマイゼーションの本格化を狙う3D Systems
アメリカの3Dプリンター最大手3D Systemsは、新たな3Dプリントプラットフォーム「Figure 4」の販売を2018年7月~9月頃からアメリカ国内で開始すると発表した。3Dプリントが試作品の造形から最終部品の製造や量産へとシフトする中、具体的にどういったケースで活用が見込めるのか。 今回、来日した同社のCorporate Development and Digitization担当SVPのHugh Evans氏とSenior Research EngineerのScott Turner氏に、Figure 4開発の目的と展望について話を聞いた。
Figure 4は、複数台連結させたSLA方式の3Dプリンターとロボットアームによるプラットフォームで最大造形サイズは124.8×70.2×346 mm。最大16台のプリンターが連結でき、洗浄や二次硬化といったポストプロセスまで自動で行う。また、本体内に備え付けられた3Dスキャナーで造形物をスキャンし、データと比較することで検品までサポートする。
価格は最小ユニット構成で日本円にして約110万円程度。日本での発売時期や価格は未定だ。
想定する導入先として、歯科を中心とした医療分野と、プラスチック製品の多品種少量生産を主とする製造現場をEvans氏は挙げている。歯科分野では同社が自社開発した生体適合性材料を使い、30個のインプラントを10分で造形できるとしている。
また歯科以外にも、欠損した骨に3Dプリントしたインプラントを活用する事例が生まれていることから、同社では医療分野こそがマス・カスタマイゼーションの最初の有力な市場と見ている。
ちなみに日本では同社の3Dプリンターによるインプラントは認可が下りていないため、製造業を中心に販売を計画しているという。
Evans氏は同製品の特徴として、非常に誤差の少ない造形能力と生産性を挙げている。「ハードとソフトの両面で最適化を図っている。1辺25mmのものを造形する場合、誤差は±100μm以内に収まる。ハードウェア、ソフトウェアだけでなく素材面でも安定した造形と高い再現性を実現するよう工夫している」(Evans氏)
既にアメリカ国内では実証実験が進んでおり、米空軍と航空機メーカーと連携し、生産が終了した軍用機の部品生産にFigure 4を導入している。
また、米海軍では同社の金属3Dプリンター「ProX DMP320」を導入し、バルブやハウジング、ブラケットなど鋳造部品の交換部品として造形する予定であることを明らかにした。
Turner氏は、3Dプリンターによる最終製品の製造、とりわけマス・カスタマイゼーションの普及の鍵を握るのは3Dデータの量と質が重要だとする一方で、データをスキャン/作成するのが先か、データが既に充実していることが先かという「鶏が先か、卵が先か」といった議論が欧米でも起きていると語った。
その上で医療分野や耐用年数の長い機器の部品など、確実に需要が存在する分野に注力することで、実用性の高い3Dデータを着実にストックしていきたい考えだ。