急がば回れ——型を作るための型を作る、シリコーンモールド作成法「Metamolds」
2018/10/02 08:30
フィギュアや模型などの複製には、シリコーンモールドを使う方法が良く使われる。この方法では、原型をシリコーンで型取りしてモールドを作り、レジンを流し込んで硬化させ、硬化後に造形物をモールドから抜き取るという手順を踏む。この方法は、原型の型取り、抜き取りのためのモールド分割の位置決めなど、熟練した手作業で行われている。
この作業を自動化し、シリコーンモールド作成の時間と費用を節約する方法が、イタリア国立研究議会情報科学技術研究所(ISTI-CNR)とオーストリア科学技術研究所(ISTオーストリア)の研究者によって開発された。研究成果は『SIGGRAPTH 2018』で発表されている。
この方法では、原型から直接型取りするのではなく、原型の3Dデータを解析して、シリコーンモールドを作るための型「Metamolds」を3Dプリントする。この型にシリコーンを流し込んで硬化させ、シリコーンモールドを作る。作業が1ステップ増えることになるが、誰にでも簡単にシリコーンモールドが作れるようになる。
Metamoldsでは造形物の成形性解析を行い、造形物がモールドに引っかかってなかなか取り出せない、いわゆる「無理抜き」にならないようにモールドの分割位置を決定、かつ、レジンがまんべんなくまわるように湯口の位置を決定する。形状によっては二面ではなく三面以上の分割も行われるという。
この研究の意義は、熟練した職人の知識と経験をコンピュータ化したことにある。ISTオーストリアのBernd Bickel助教は、「今日まで、複雑な形状のシリコーン成形は、何年もの経験と巧みな手作業を必要とする工芸であったが、Metamoldsを使うことで誰でも作れるテンプレートになる」と述べている。
(fabcross for エンジニアより転載)