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MIT、太陽光だけで効率的に氷を解かす手法を発表——飛行機や電線の着氷除去に有効

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、飛行機や電線などに付着する氷を化学薬品や電力を使わないで解かす方法を発表した。研究成果は、2018年8月31日付けの『Science Advances』に「Photothermal trap utilizing solar illumination for ice mitigation」として掲載されている。

氷が飛行機、電線、風力タービンのブレードなどに付着すると、性能の低下だけでなく致命的な故障が起こる可能性がある。飛行機などでよく使用する着氷防止スプレーはエチレングリコールを含んでおり、環境に対する影響が懸念される。また、電熱による手段もコストと安全上の理由から好ましいものとはいえない。

物体と氷の界面に水の層があれば、氷が滑り落ちるため、氷の塊全部を解かす必要はない。そこで研究チームは、受動的に熱を集めて水の層を作る方法を模索し、太陽光を利用した光熱トラップを開発した。構成はおどろくほどシンプルで、吸収層/拡散層/断熱層の3層から成り、電力も不要。人工灯を利用すれば夜でも氷を解かすことができるものだ。

最上層の吸収層は、入射する太陽光を捕らえて熱に変化する。サーメット複合材料を使用し厚さは1μm以下。変換効率95%、放射率はわずか3%だ。吸収層だけでも防氷効果があるが、太陽光が直接当たるところにしか作用しないという欠点がある。

これを解決するため、吸収層の下に、膜厚400μmのアルミ層で、熱応答性がよい拡散層を追加する。これで吸収層からの熱を効率的に横方向に拡散し、太陽光が直接当たらない場所の氷も解かす。最下層はシンプルな市販の発泡断熱層だ。

研究チームは、光熱トラップとアルミニウム上にそれぞれ氷を置き、融解実験を行った。太陽と同等のスペクトルを有するハロゲン光源を使い、1平方メートルあたり1.8kW(太陽の約1.8倍)を照射、周辺温度は-25℃とした。すると温度が均一になるまでの時間は同等だが、吸収層を持つ光熱トラップは温度が50~52℃上昇して氷を融解したのに対し、アルミニウムの温度上昇は15~17℃で凍結したままだった。

外気温-3.5℃、1平方メートルあたり約0.6kWの太陽光の下という屋外試験においても、光熱トラップの温度上昇は37℃と、アルミニウムと比べて3倍高い性能を示した。光熱トラップ上の雪は数分で融解し、傾斜面を滑り落ちることも確認した。

今回開発した光熱トラップは、建物の屋根の除氷パネルなど幅広い商業用途が考えられる。研究チームは、寿命や最適化の検討は必要だが、据え付け型システムにはすぐ実用化できるとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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