形状変化を電流制御できる新たなメタマテリアルを開発
2019/10/17 10:30
カリフォルニア工科大学とジョージア工科大学、チューリッヒ工科大学の共同研究チームが、電気化学反応により形状を変えることのできる、ナノスケールで造型されたメタマテリアルを考案した。負荷する電流の制御により、変形量を連続的かつ可逆的に変化させることができ、次世代のエネルギー貯蔵および生体マイクロインプラントへの応用可能性がある。研究成果は、2019年9月11日の『Nature』誌にオンライン公開されている。
一般的な形状変化材料は、機械的や磁気的、あるいは温度といった外部刺激によって、別の形状に変化する。多くの場合、オンオフスイッチのように、2つの異なる状態間でのみ変化し、変化させた形状を保持するには、外部刺激を維持する必要がある。
今回研究チームは、中間的な形状変化量にも調整でき、外部刺激を除去しても、まるで口を結んだ風船のように形状を保つことができるメタマテリアルを考案した。
研究チームは、2光子リソグラフィーと呼ばれる超高解像度3D造形法で、シリコンを使った格子間隔約20μmのマイクロ格子網を作成した。2光子リソグラフィーとは、光子が2つ来て初めて反応が起こるプロセスに基づくもので、光の波長よりも微細な構造を造形できることから注目を集めているナノ加工技術だ。
研究チームは、シリコンのマイクロ格子網とリチウム電極を組み合わせて、電気化学的に駆動されるシリコン-リチウム合金化反応を通じて、格子網を変形することにチャレンジした。その結果、電流を負荷すると発生する化学反応により、格子網の直線部分が曲線状に変形すること、変形の程度は電流の大きさによって制御、微調整できること、電流を停止してもその形状を維持できること、さらに容易に変形を逆転できることを確認した。また、マイクロ格子網の中に意図的に欠陥を導入することで、設計したパターン通りに変形できることも実証した。
このような形状変化を微調整できる材料は、将来のエネルギー貯蔵分野において大きな可能性がある。既存のバッテリーには、エネルギー貯蔵の前後で膨張収縮を繰返し、応力による物理的な劣化が生じるものがある。今回開発したメタマテリアルでは、このような構造変化を上手く処理するように設計することができ、より軽量かつ安全で長寿命のバッテリーを開発できる、と研究チームは期待している。
(fabcross for エンジニアより転載)