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クリエイター向けの自動車カスタマイズでホンダとMakers’ Baseがコラボ

(出典元:Makers’ Base)

東京・目黒にある会員制工房Makers' Baseは、ホンダの軽商用車「N-VAN」開発チームと共同でクリエイター向けのカスタマイズ車を発表した。ワークショップや店舗運営のノウハウを生かし、軽商用車の新たな需要開拓を狙う。

Makers’ Baseは2013年にオープンした会員制工房で、アナログ工作機械を中心とした機材が利用できる。工房内でアクセサリーやインテリアなどを制作するワークショップを提供し、20代から30代の女性を中心に年間延べ3万人が訪れる。また、日本国内の商業施設に出店し、クリエイターが制作した製品の販売や臨時ワークショップも提供している。

今回のカスタマイズ車はMakers’ Baseが持つクリエイター向けの店舗や工房の立ち上げと運営ノウハウを反映したモデルで、将来的にはクリエイター層を対象にした商用車のカスタマイズサービスを提供したい考えだ。

自動車メーカーと工房によるオープンイノベーション

コラボレーションの経緯について語る本田技術研究所 デザイン室主任研究員 山口真生氏(左)と、Makers’ Base COO 松田純平氏(右) コラボレーションの経緯について語る本田技術研究所 デザイン室主任研究員 山口真生氏(左)と、Makers’ Base COO 松田純平氏(右)

ホンダは開発時から軽商用車の潜在的な利用者層にN-VANを認知させるべく、さまざまな業種の移動店舗にカスタマイズするモデルを、利用ケースとして紹介することを検討していた。しかし、ホンダ自身がカスタマイズして販売することは難しい。
そこでホンダのN-VAN開発チームは個人のつてを頼って国内のさまざまな事業者を訪ね、軽商用車の潜在的利用者層の調査とコラボレーションの可能性を模索していた。

一方、Makers’ Baseも商業施設やイベント会場の出展を展開していく中で、「平台に商品を置いただけでは売れないし、空間を作りこまないとワークショップも商品も売れない」(Makers’ Base COO 松田純平氏)といった知見を得たものの、空間を充実させればさせるほどかかる、什器や備品などの輸送コストや製作コストがネックとなっていた。クリエイターのマネタイズを支援する同社にとって、こうした悩みは自社だけの課題ではなくCtoC(個人間取引)で作品を販売するクリエイターにも当てはまると捉え、サービス化を検討していた。

ホンダの社員にMakers’ Baseの会員がいたことから、N-VAN開発チームとMakers’ Baseはコラボレーションの検討を開始。Makers’ Baseの主な利用者層であり、ホンダがこれまでアプローチできなかったクリエイター層やワークショップを利用する女性層向けのカスタマイズ車を開発した。

第一弾としてTwitter上でアイデア募集した結果、イラストレーターとして活動する「ちひろ」さんのアイデアを基にしたカスタマイズ車を実際に製作。2019年1月に開催された国内最大級のカスタム自動車の展示会「東京オートサロン2019」で披露した。

 東京オートサロン2019で展示したカスタマイズ車。(出典元:Makers’ Base) 東京オートサロン2019で展示したカスタマイズ車。(出典元:Makers’ Base)

東京オートサロン2019での反響は大きく、「これまでホンダ単体ではリーチしにくいと感じていた層にも、今回のような提案を通じて、新しい価値の提供ができることがわかった」(本田技術研究所 デザイン室主任研究員 山口真生氏)という。

また、自動車のマイナーチェンジと比較して低いコストで実現できることについても、「マイナーチェンジと同じくらいお客様の興味を引き上げられるのでは、と社内でも評価されてきたと感じる」(山口氏)としている。

現在はローランド ディー.ジー.と、車内に業務用プリンターを搭載したモデルを製作中で、2019年2月23日と24日にHONDA ウエルカムプラザ青山で展示する予定だ。

ローランド ディー.ジー.とのカスタマイズ車(写真提供:Makers’ Base) ローランド ディー.ジー.とのカスタマイズ車(写真提供:Makers’ Base)

両社ではカスタマイズ車の製作と展示を通じて、ホンダは潜在ユーザーの開拓、Makers’ Baseは新サービスへのブラッシュアップを進めたいとしている。

大企業とスタートアップがお互いの資産と強みをかけあわせて、新たな製品やサービスを開発するケースは「オープンイノベーション」と定義され、さまざまな事例が存在しているが、今回の両社の取り組みも両社の強みを生かしたオープンイノベーションの一環と言えよう。

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