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金属をコアに使って強靭性ポリマー繊維を開発——バイオマテリアルがヒント

メタマテリアル繊維のデモンストレーション

ノースカロライナ州立大学の研究チームが、ポリマー製の中空シースに、コアとしてガリウム金属を挿入した複合繊維を作成した。変形初期には金属ガリウムとしての強度を示すが、変形が進んでコア金属が破断しても、破断した金属間のひずみをポリマーシースが吸収し、全体として破断することなく長く変形できる。これは、人間の骨と組織の関係に似た性能を示す強靭性繊維として、ソフトロボットや、包装材料、次世代繊維に活用できると期待される。研究成果は、2019年2月22日の『Science Advances』誌に公開されている。

同大学生物分子工学科のMichael Dickey教授は、「人間の皮膚や組織の強靭さや弾性を、工業材料として再現する研究が注目されている」と語る。美容に良いとされるコラーゲンは、網目状の繊維束として、外部からの負荷エネルギーを迅速かつ効率的に分散させる能力があるとされる。研究チームは、このようなバイオマテリアルにヒントを得て、ゴムの弾性と金属の強度という両方の長所を持つ新たな材料開発にチャレンジした。

研究チームは、外径1.2mm内径0.85mmの熱可塑性エラストマーの中空シースに、融点が30℃のガリウムの融液を注入し、冷却固化することで複合繊維を作成した。これに荷重を負荷すると、初期は金属コアの強度を持ち、10MPa程度の応力に耐える。変形を進めると、金属コアの1カ所で破断するが、金属が破断しても複合繊維は破断せず、ポリマー製シースが破断した金属間のひずみを吸収する。更に変形を進めると、金属コアの破断個所が増加するが、金属コアが破断する度に負荷エネルギーが分散されて、繊維は破断せず延伸しながらエネルギーを吸収し続け、最終破断までに元の長さの7倍にまで伸びる。

「この複合繊維の下端に錘をぶら下げると、繊維は切れることなく、内部コアの破断を繰り返すことを通じて、エネルギーを徐々に開放し、錘をゆっくりと安定的に降ろすことができる」と研究チームは述べる。外部からの負荷エネルギーを吸収して、破断することなく変形できる強靭性(粘り強さ)は、工業材料において常に重要であるが、開発した繊維は金属またはシースの単体よりも高い強靭性を示した。

また、低融点であるガリウムは、30℃以上に加熱することにより金属コアを溶融して、再冷却により初期状態に戻すことができるため、再利用が可能だ。「この研究ではガリウムを用いたが、コアとシースに様々な材料を使うことにより、機械的性質を変化させ、また高温において機能を維持するように繊維を制御することができる。未だ概念実証の段階だが、ソフトロボットや、織物など色々な用途に活用できる可能性がある」と、Dickey教授は期待している。

 

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