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血管内を移動できる超小型ソフトロボット——クジラの尾びれがヒント

鯨の尾びれをヒントにした、血管内を移動できる超小型ソフトロボットの模式図。筋状心臓細胞から成る推進エンジンと、平面からリング状に形状変化する翼構造から構成される。 Image courtesy of City University of Hong Kong

ダートマス大学と香港城市大学の共同研究チームが、鯨の尾びれ状に成形された心筋細胞から構成される推進エンジンを持ち、血管内を移動できる超小型ソフトロボットを考案した。体外から近赤外光を照射することにより、形状を変化させることができ、標的のがん細胞部で正確に停止させて、化学療法薬剤を投下することができる。研究成果が、2019年3月25日の学術誌『Small』に掲載されている。

自然界に存在する生物体は、特定の行動を実行するために、形状を変えることができる。ヤマアラシは自己防衛のためボールのように丸くなり、鳥は飛ぶために羽根を伸ばす。研究チームは、このような形状変化行動を模擬するロボットの開発に取り組んでいる。

今回研究チームは、鯨の尾びれをヒントにして血液中を泳ぐことができ、皮膚を透過する近赤外光で体外から形状および運動を制御できるドラッグデリバリー用バイオハイブリッドロボットを考案した。香港城市大学が、ロボットの基本設計および実験を担当し、ダートマス大学は、デバイスの機械的数値解析を行い、サイズや形状などの最適化を担当した。

開発したロボットは、鯨の泳ぎを模擬した尾びれ構造によって推進する。この尾びれ構造は、航空機の翼のような形状に3Dプリントされ、さらに心筋細胞でコーティングされている。心筋が心臓を連続的に鼓動させるのと同様に、この心筋細胞も同期された収縮運動によって、デバイスを前進させるように機能する。さらにデバイスは、感光性ハイドロゲルで被覆され、血液中をフロートして移動することができる。そして、皮膚を透過する近赤外光が体外から照射されると、翼は平面形状からリング状に畳まれ、血液中を移動できなくなり停止する。

例えば、体外からの近赤外光照射で、がん細胞部で停止したロボットは、患部にピンポイントで化学療法薬剤を投下し、「これまでに類のない制御性と応答性」を持ったドラッグデリバリーを実行できる。このロボットは、数ミリから数10センチまでの多様なサイズで製作することができ、困難な環境におけるナビゲーションや観察を柔軟に実行することができる。「柔軟に変形可能というコンセプトは、次世代のインテリジェント・バイオハイブリッドロボットに新たな道を切り拓く」と、Chen助教授は期待している。研究チームは、近赤外光をロボットの別々の翼に照射して、さらに操縦性を高めるとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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