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コンピューターの高速化につながる多値論理トランジスタを開発——バイナリを超える論理回路を目指して

テキサス大学ダラス校の研究チームは韓国の研究者らと共同で、結晶質と非晶質の酸化亜鉛(ZnO)を組み合わせることで、0と1の2値だけでなく3個以上の論理値を持つ多値論理トランジスタを開発したと発表した。既存のコンピューターチップの構成と互換性があるだけでなく、次世代技術として期待の高い量子コンピューターと現在のコンピューターとの架け橋となりうる。研究結果は2019年4月30日付けの『Nature Communications』に掲載されている。

トランジスタによる論理回路では一般的にオンかオフ、すなわち二進数でいう1か0の情報しか運べない。コンピューターの演算能力を高めるには、1つのチップにたくさんのトランジスタを実装して集積度を高めることになるが、トランジスタ素子の小型化にも物理的な限界に近づきつつあるとも言われている。

実装個数が増やせないのなら、1つのトランジスタで運ぶ情報量を増やせば良い。そうしたコンセプトの元、トランジスタのオンとオフ以外の状態も利用する多値論理トランジスタの開発が近年進められている。

研究チームは、量子井戸構造を持つ有機-無機ハイブリッド型の超格子薄膜をシリコン基板上に作製した。無機層の材料として、結晶にもアモルファスにもなるZnOを選択した。厚みわずか2.8nmのZnOナノレイヤーを作製し、アモルファスZnO中に量子ドットZnOを組み込んだ。この独特の構造のため、電子のエネルギー密度の移動度端(※局在状態と非局在状態の境界エネルギー)では「移動度端の量子化」が起こり、トランジスタとして使用したとき、オンとオフの中間の状態が生まれた。

重要なことに、中間状態の数はZnOナノレイヤーの数に依存していた。つまり、ZnO層を2層使うと3値、3層使うと4値の論理回路を作ることができる。中間状態の電流は180日後もほぼ一定と安定性も優れており、超格子薄膜は500℃の高温にも耐えた。研究チームはトランジスタだけでなく、3値インバータも試作した。

研究チームを率いるKyeongjae Cho教授は、「多値論理回路を内蔵したデバイスは、一般のバイナリコンピューターよりも速く動作するだろう。量子単位をつかえば連続の値を持てる」と、既存のコンピューターと互換性があるだけでなく、次世代技術として注目が集まる量子コンピューターへつながる研究だと位置づけている。

さらに「我々の研究はまだ既存のデバイス技術に基づいているため、量子コンピューティングほど革命的ではない。しかし、その方向に徐々に近づいている」とCho教授。今回は複合ナノレイヤー材料としてZnOを選択したが、今後はより最適な材料を探すとともに、量子デバイスと整合させる方法を検討するとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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