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シャーレ上でヒト毛包の生成に成功——3Dプリンターを活用した毛髪再生治療法の研究

再生医療の一環として、3Dプリンターを活用した毛髪再生治療法の研究が行われている。

最先端の治療方法として世界各地で研究開発が進む再生医療。患者の体外で人工的に培養し構築した組織を移植することで、損傷した臓器や組織を再生し、失われた人体機能を回復させる医療のことだが、毛髪の再生もその例外ではない。

Nature Communications

米コロンビア大学アービング医療センター(CUIMC)では、けがや脱毛症などで毛髪を失った人の治療のために、3Dプリンターを活用した毛髪再生の研究が行われており、その研究論文が、学際的オープンアクセスジャーナル「Nature Communications」に掲載された。

研究室でマウスやラットの体毛を人工的に成長させることは何年も前から可能になっており、その方法も確立されている。しかし、理由は完全には解明されていないが、ヒト細胞では実現できていなかった。

CUIMC Tissue Engineering of Human Hair Follicles

そこで、CUIMCの研究チームは、「毛包」と呼ばれる毛根を包む組織の成長にとって、より自然な微小環境を作るために3Dプリンターを活用した。ヒト毛包のパターンを模倣するプラスチック製の型を3Dプリンターを用いて作り、その円形の型には直径0.5×高さ4mmの細長い突起部が数十本作られた。「従来の方法では、これほど細長い突起部を作ることは不可能でした。3Dプリンティング技術により、この研究は一段と進めやすくなったのです」と研究論文の著者であるErbil Abaci博士は述べている。

CUIMC Tissue Engineering of Human Hair Follicles

研究チームは、型の周りにヒト皮膚を成長させて作り、その後、型を取り除いた。その結果、ヒト皮膚の中に微小な深い穴ができるので、ヒト毛包細胞をその穴の中に移植し、その上を毛髪の主な構造成分であるケラチン産生細胞で覆った。その状態で育毛を促進する成分を細胞に注入すると、3週間後にヒト毛包が出現し毛髪を作り始めた。シャーレ上で人工的にヒト毛包が作られたのはこれが初めてだという。

CUIMC Tissue Engineering of Human Hair Follicles
CUIMC Tissue Engineering of Human Hair Follicles

皮膚再生医療および遺伝性毛髪疾患の専門家で、研究論文著者の1人であるCUIMC教授のAngela Christiano博士は、「私たちのゴールは、この方法で再生された毛包をクリニックで使う方法を考え出すことです」と話す。従来の毛髪移植手術では患者の後頭部から毛髪を移植するだけなので、実際に毛髪の数が増えるわけではないが、この方法では毛髪の数が実際に増えることになるという。

「つまり、『毛髪農場』、グリッド状に模倣生成された毛髪を実際に育てることができて、患者自身の頭皮にその毛髪を速やかに戻す移植ができるのです」とChristiano博士は述べている。

この研究成果は、やけどやけがで毛髪を失った人のみならず、毛髪再生を望む全ての人にとって朗報となるだろう。

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