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レンズの球面収差をゼロに——収差を補正できる設計解を求める手法を発見

メキシコのモンテレイ工科大学の博士課程の学生が、光学系の収差のひとつである球面収差をゼロにする方法を解析的に導いた。非常に高い画質をもったカメラ、顕微鏡、望遠鏡、内視鏡などの光学系の設計につながる可能性がある。研究結果は、2018年10月25日付けの『Applied Optics』に「General formula for bi-aspheric singlet lens design free of spherical aberration」として公開されている。

カメラをはじめとする光学システムで使われるレンズや曲面ミラーは、一般的には製造の容易さから球面形状をしている。理想レンズでは入射した光は全て焦点位置で結像するが、実際のレンズは理想像からのずれ、すなわち収差が発生する。球面収差は、光軸上の1点から出た物体の光がレンズを通って結像する際に、レンズに入射する高さによって光軸上の結像位置がずれる現象で、像がぼやけたりシャープさに欠けているように見える。

球面収差を低減または除去する方法としては、非球面レンズの利用がある。非球面を使うと収差の補正能力が上がり、球面収差だけでなく非点収差といったほかの収差も減らすことができる。球面レンズだけでは枚数が多く複雑なレンズ系になるところ、非球面レンズがあればレンズの枚数が減り、結果として、小型で軽量、場合によっては安価になることもある。

球面収差を持たない単レンズの設計問題は「Wasserman-Wolf問題」としても知られている。1949年にWassermanとWolfが発表した論文では、技術的な方法で説明しているが、解析解を与えるものではない。今回、論文の筆頭著者であるRafael Gonzalez Acuna氏の研究チームは、この問題の解決につながる厳密な解析解を導き出した。スネルの法則やフェルマーの原理に加え、面形状の連続性などを考慮して最終的に導き出した数式を利用すると、第1面で発生した球面収差を補正可能な第2面の形状が求められる。

論文ではいくつか例を示すとともに、全ての例に対して光線を500本ずつ通して追跡した結果、平均して99.9999999999%満足していることを確認した。この解は、結像位置、光学系の厚みや材料を変えても計算できるので、様々な光学設計に適応できる可能性がある。

研究チームはまた、別の論文でデカルトの卵形レンズの一般的な問題である「Levi-Civita問題」についても解析解を求めた。どちらの論文も解が一意に決まるのがポイントで、光学デバイスの設計において大きな可能性を秘めていると、Gonzalez Acuna氏は強調している。

fabcross for エンジニアより転載)

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