パスタのようなグリッパーで優しく掴む、クラゲ捕獲用水中ロボットハンドを開発
2019/09/25 10:00
海に棲むクラゲは、その体重の95%は水分だ。だが、残りの5%には、多くの科学的研究対象が含まれているという。例えば緑色の蛍光物質や、老化現象の解明のヒントになるかもしれない生態などだ。
クラゲの研究の難しさのひとつは、その採取の難しさだ。現在、海洋生物学者が使える遠隔操作の標本採取ツールは、石油やガス産業のために開発されたもので、岩のように固いものを掴むことに適しているものの、クラゲを捕まえようとすると細切れにしてしまうという。
そこで、ハーバード大学ジョン.A.ポールソン工学・応用科学スクール(SEAS)ワイズ研究所とニューヨーク市立大学バルーク校の研究チームは、繊細なクラゲにダメージを与えることなく捕まえられる水中グリッパーを開発した。詳細はロボット工学ジャーナル『Science Robotics』に掲載されている。
このグリッパーには、平打ちパスタのような6本の指がある。それぞれが内部に中空のチャネルを有する、薄く平坦なシリコン製ストリップの指で、柔軟だが堅いポリマーナノファイバーの層に接着されている。6本の指は、3Dプリンターで作られた長方形の「手のひら」につながれ、チャネルが水で満たされると、ナノファイバーで覆われた側にカールする。それぞれの指が加える圧力は0.0455kPaで、人間のまぶたの圧力の10分の1以下だという。
研究チームはマサチューセッツ州ボストンのニューイングランド水族館へこのグリッパーを持ち込み、水クラゲを含むゴルフボール大の様々なクラゲを捕らえ、水圧を下げるまでクラゲが逃げられないことを確認した。論文共著者で生物・環境科学教授のDavid Gruber氏は、「海洋学者は、アクセスできない環境下で、クラゲのようなデリケートな生物を扱える手段を待ち望んでいた」とし、「このグリッパーは研究のペースと質を大いに改善することになるだろう」と述べている。
(fabcross for エンジニアより転載)