止血補助具やプラカップ専用ごみ箱で目指す「ファブのあるまちづくり」——ファブ3Dコンテスト2019
慶應義塾大学 SFC 研究所ファブ地球社会コンソーシアムは2019年11月24日、「ファブ3Dコンテスト2019」の表彰式を開催した。ファブ3Dコンテストは、デジタルファブリケーションやIoT領域での人材発掘を目的として2016年に始まった。4度目となる今回は「ファブのあるまちづくり」をテーマに、SDGs(持続可能な開発目標)や地域の課題解決と新技術の可能性を結び付け、街の未来をより良くするアイディアを募集した。個人17件、チーム13件の合計30件の応募があり、5つの作品が賞を獲得した。
最優秀賞:希望のMYフック
災害時などでけが人に布と棒を使って止血を行う際、その布と棒を固定するための補助となる器具(フック)を3Dプリントで制作した。救急救命士や医師とのコラボレーションで生まれた作品は、工業技術センターで引張試験を実施したり、紹介文中で救命講習の受講を推奨していたりと、実際の使われ方を想定した提案であることが高く評価された。
個人部門優秀賞:E.corner
震災時に役立つものとして発想した、さまざまなものを固定するための道具。シンプルな形状を追求した結果、作ってみたいと思わせる身近さや、幅広い分野での応用を想起させる作品だ。
チーム部門優秀賞:プラスチックカップのおうち
大宰府と鎌倉の2カ所を行き来しながら制作したのは、プラスチックカップのポイ捨て問題を解決するための専用ごみ箱。SDGsの「住み続けられる街づくりを」「つくる責任 つかう責任」を目標に設定し、チームで楽しみながら取り組む姿が審査員の心を打ったようだ。
個人部門特別賞:鎌倉観光をもっと楽しく!「カマピクト」
外国人観光客の多い鎌倉で学生生活を送る滑川さんは、デザイン思考で観光が楽しくなるものづくりに挑戦。目の不自由な人でも情報が分かるように、色の組み合わせや立体感を工夫した「触れるピクトグラム」を開発した。
チーム部門特別賞:Interview at FUKUOKA city
小学4年生が学童保育の先生たちと取り組んだのは、新聞記者として福岡の街を取材するボードゲーム。遊びながら福岡の町やSDGsを学んでいくための作品だが、「職務質問を3回されるとリタイア」という現実的なルールに会場は笑いとどよめきに包まれた。
SDGsやまちづくりという大きなテーマが掲げられたファブ3Dコンテスト2019。ものづくりの技術をきっかけとして、地域やコミュニティの中でつながり課題解決に取り組む姿を見ることができた。ファブ地球社会コンソーシアムでは今後もファブの力を使って地域課題を解決できる人材の育成に取り組んでいくという。