汚染物質を検知できる高感度ウェアラブルガスセンサーを開発——環境監視やバイオマーカーの測定に
2020/02/17 10:00
環境や健康状態を監視するため、神経や肺に損傷を与える可能性のある化学物質などを検出する高感度ウェアラブルガスセンサーが開発された。この研究はペンシルベニア州立大学とノースイースタン大学によるもので、2020年1月8日、『Journal of Materials Chemistry A』に掲載された。
ナノマテリアルを使ったガス検知デバイスでは、信号の受信に「くし形電極(interdigitated electrodes :IDE)」を使用し、ウェアラブルデバイスとするためには、クリーンルームの中で、コストも時間もかかるリソグラフィプロセスを必要とする。加えて検出性能を向上させるため、温度を上げるヒーターを統合しているが、これは製造プロセスを複雑にする要因となっている。
今回研究チームは、多孔質のレーザー誘起グラフェン(Laser-Induced Graphene:LIG)パターンに基づく新しいガス検知プラットフォームを開発。デバイスプラットフォームの非検知部分には、銀でコーティングした蛇行回路を作成した。ガス検知領域の電気抵抗がかなり大きいため、銀に電流を流すことで局所的に加熱され、個別のヒーターは不要になる。回路を蛇行させたことで、デバイスは身体に合わせてバネのように伸縮可能となる。そしてプラットフォームの検知領域上には、CO2レーザーを用いて複数のセンサー——異なる選択性を持つナノ材料——を簡単に作成できる。
論文では、自動車の排気ガス中の二酸化窒素を検出できることが示された。また、酸性雨の原因となる二酸化硫黄も検出できる。今後、複雑な混合物の中の複数の成分を解読するために、数百個の選択的センサーを実装できる高密度アレイの作成を検討する予定だという。
現在、医療機器メーカーと協力して、人体からの気体バイオマーカー検出や肺に影響を与えうる汚染物質の環境検出といった患者の健康モニタリング向けに、生産規模の拡大に取り組んでいる。
(fabcross for エンジニアより転載)