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日本人医師が開発した3Dプリントできる簡易人工呼吸器、新型コロナウイルス対策で実用化に向け寄付と協力を募集

(出典:石北氏のFacebook投稿)

国立病院機構新潟病院は2020年3月27日、3Dプリンターで作成できる簡易人工呼吸器モデルを実用化し、現在世界で必要とされる救命活動を支援することを目的とする「COVIDVENTILATOR PROJECT」の発足を発表し、寄付と協力を求めている。

本プロジェクトでの実用化を目指す人工呼吸器は、新潟病院臨床研究部脳神経筋病態生理研究室長の石北直之医師が発明した。てんかんの発作を止めるため、動力なしでどこでもすぐに使える簡易吸入麻酔アタッチメント「嗅ぎ注射器」として2010年に発明したものを基に、最小限な仕様の人工呼吸器というコンセプトで考案した。一定の性能要件を満たす3DプリンターとABS樹脂があれば製造可能であり、2017年には宇宙ステーション内での動作試験も成功したという。

(出典:石北氏のFacebook投稿)

2020年3月15日、新型コロナウイルス感染症の流行による人工呼吸器不足を危惧した海外の医師から相談を受けた石北氏は、自身のFacebookアカウントで実用化に向けた協力者を募った。すると世界中から多くの問い合わせが殺到し、広島大学トランスレーショナルリサーチセンター准教授の木阪智彦医師の協力を得て、石北氏が責任者となって正式にプロジェクトを発足した。

プロジェクトの目的は、2020年3月27日時点で日本を含む世界における医療機器認証を得ていないこの「3Dプリント人工呼吸器モデル」を、各国の規制当局が設定する認証基準を達成し、迅速に実用化機器を完成させること。以下の4課題を解決するため、新潟病院では寄付の受付を開始した。

  1. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)による後発医療機器としての認証手続きに向けた実用開発費用、必要とする非臨床試験費用、および医療機器水準の文書作成費用
  2. 日本以外の国や地域で医療機器認証を受けるための費用
  3. 安全に使用するための医療機器の品質管理体制の確立とPL(生産物賠償責任)保険契約費用
  4. 医学的妥当性とその後のフィードバックのために、臨床研究システム構築(データ収集体制、モニタリング体制、データ解析体制、およびデータ公表)のための費用

【寄付に関するお問い合わせ窓口】
国立病院機構新潟病院企画課・業務班長 池田太湖
電話番号: 0257-22-2126(内線1230)
FAX番号: 0257-24-9812
E-mailアドレス: 225-gyoumuhancyou@mail.hosp.go.jp

公開されているサンプルデータを読み込んだもの。

また、人工呼吸器モデルの製造協力を希望する人や組織に対し、石北氏は個人のFacebook投稿でサンプルデータを公開している。ABS樹脂で出力したサンプルデータの全体像と近接像の写真にハッシュタグ「#covidventilator」がついたSNS投稿に対し、プリントのクオリティチェックおよび制作者のチーム構成とバックグラウンド等の確認を行ったうえで、契約書を交わして本データを送付するという。

さらに石北氏は、人工呼吸器の長時間耐久テストを行うYouTubeチャンネルへの登録も呼び掛けている。1000人以上の登録を達成し、スマートフォンによるリアルタイム配信を可能にすることで、公開実験のクオリティを確かなものにする目的だ(2020年3月30日14:45における登録者数は627人)。

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