MIT、安価で効率的な太陽光による淡水化システムを考案
2020/04/03 07:00
MITと上海交通大学の研究チームは、太陽光を利用した海水の淡水化システムを考案した。フラットな蒸発器と凝縮器の複数セットを垂直に積み上げ、透明なエアロゲル断熱材で覆った構造で、1m2あたり1時間に5.78L以上の新鮮な飲料水を供給できる。研究結果の詳細は、『Energy and Environmental Science』誌に2020年2月7日付で掲載されている。
今回考案された淡水化システムは、蒸発器で太陽熱を吸収し、その熱を水層に伝えて海水を蒸発させるというものだ。蒸気は次の凝縮器で凝縮するが、蒸気凝縮により生じた水だけでなく、熱も次段の蒸発器で利用する。また、通常の脱塩システムと異なり、淡水化の過程で生じた塩の廃棄や濃縮塩水蓄積の必要がなく、日中に蓄積した塩は、吸湿性物質を利用して夜間に海へと戻される。
各段階で生じる熱を次の蒸発ステップで利用することで、凝縮過程で放出する熱を無駄にしないことが、今回の淡水化システムのポイントだ。凝縮エネルギーの利用により、太陽光エネルギーを水分の蒸発エネルギーに変換する際に、385%の効率化ができた。研究チームは、効率レベルは理論的に700~800%を実現できる可能性があるとしている。
蒸発器と凝縮器の層を増やすことで、淡水を生産する変換効率も高められるが、コストやシステムの大きさも増大する。今回の実証実験では、10層とした。MITの屋上で行った実験では、太陽光収集エリア1m2あたり1時間に5.78L以上の飲料水レベルの淡水を供給できた。研究チームのEvelyn Wang教授によると、この値はこれまでに報告されている太陽光を利用した淡水化システムと比べて2倍以上だという。
今回研究チームが開発した淡水化システムは、市販の太陽光吸収材や、毛細管現象による水の移動に利用するペーパータオルなど、安価で入手しやすい材料で作られている。最も高価な材料は絶縁体として装置の外側を覆った透明エアロゲルだが、これも他の安価な絶縁体に代替可能だ。従来のシステムは、太陽光吸収材と毛細管現象用の素材が一つになった特殊な部品が必要だったが、この2つを分離したことがコスト削減につながったという。
この淡水化システムの技術を利用すれば、人1人が1日に必要な飲料水を、1m2の太陽光収集エリアで供給できる。研究チームは、1世帯分をまかなえるシステムが100ドル程度で構築できるようになると考えている。
(fabcross for エンジニアより転載)