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3Dバイオプリントによる精密医療向け、ユニバーサルキャリアインクを開発

Photograph: Guzzi, et al. 2020

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)の研究チームは、3Dプリンターのノズル内に圧送すると液化し、ノズルから噴射すると直ちに元の形状に戻るゲルを開発した。セルロース繊維と生分解性ナノ粒子を組み合わせたキャリアインクで、心臓弁などの生体材料を、個人に合わせて製造することが容易になるとしている。研究の詳細については、『Small』誌に、2019年12月25日付で掲載されている。

近年医療分野において、患者を遺伝子レベルで分析し個人に最適な治療を行なう「プレシジョン・メディシン(精密医療)」が研究されている。それに関連して材料工学の世界でも、個人に最適なプレシジョン生体材料への注目が集まっている。しかし現状では、オーダーメイドなインプラントの実現はまだ先のことだ。「現時点では、この目標に対する進歩を遂げている最中であり、その過程で多くのことを学んでいる」と、研究チームのETHZ機械プロセス工学科の高分子工学教授 Mark Tibbitt氏は述べる。

これまで3Dプリンティングで生体材料を製造するには、アプリケーションごとに新しいインクを開発する必要があった。「例えば、目に関するインプラントに対して、耳介補綴物の事例は利用できなかった」と、Tibbitt氏は説明する。今回開発したユニバーサルキャリアインクは、新しいアプリケーション開発を劇的に簡素化するものだ。

3Dプリンティングのインクには、本質的な難問がある。ノズル内ではスムーズに通過できるように液化していなければならない一方で、プリント後は造形物の形が崩れないように固化しなければならない。

水に溶解したセルロース繊維と生分解性高分子ナノ粒子を組み合わせた今回のキャリアインクは、この問題を解決した。外から圧力がかかっていないとき、セルロース繊維は粒子に付着し、ネットワークを形成する。このネットワークはノズル内で圧力がかかると破壊するが、ノズルを通過した後はすぐに元に戻る。このキャリアインクに、ヒアルロン酸やゼラチンなど異なるポリマーを追加したところ、プリンターのノズルヘッドを通るインクの流れに変化はなかったが、ノズルから出た後にネットワークを形成し造形物が固まるスピードは速くなった。

さらに、このキャリアインクが新しいドラッグデリバリーシステムの開発にも適していると研究チームは述べている。キャリアインク内での細胞の生存率はインク外と変わらず、また、疎水性物質はナノ粒子を介してセルロース繊維とともに水相に移行できる。このように幅広く応用できることからも、まさに「ユニバーサル」なキャリアインクといえるだろう。

fabcross for エンジニアより転載)

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