エアロゲルを使った超軽量電磁シールドを開発
2020/08/28 11:00
スイス連邦材料試験研究所(Empa)は、エアロゲルをマイクロエレクトロニクスに応用することに成功した。セルロースナノファイバーを由来とするエアロゲルは広範囲の周波数を効果的に遮蔽する。
電子機器は電磁波を発生するため、機器同士が干渉しないように電磁シールドが必要になる。電磁シールドには薄い金属板やメタライズした材料が用いられることが多いが、シールド重量や形状適合についての課題があり、軽量で柔軟性と耐久性に優れた高いシールド効果を持つ材料が求められている。
Empaの研究チームは、多孔性の構造を持つ軽量材料であるエアロゲルに着目した。骨格にはセルロースナノファイバーを使用するもので、セルロースは幅広い化学修飾が可能であるため、研究対象として人気がある。
今回研究チームは、セルロースナノファイバーと銀ナノワイヤの複合体を使って、電磁波に対する優れたシールド効果を持つ超軽量シールドの作製に成功した。密度はわずか1.7 mg/1cm3であり、銀で補強されたセルロースエアロゲルは高分解能レーダー放射(8〜12 GHz)の周波数範囲で40dB以上の遮蔽を達成している。
セルロースと銀という素材の組み合わせだけでなく、材料の細孔構造もシールド効果に影響している。材料を事前に冷却した型に流し込みゆっくりと凍結させることで、氷の結晶が成長し、電界を減衰させるために最適な細孔構造を作り上げた。しかもこの手法は、空間方向ごとに減衰効果を変化させることができる。材料を下から上に向かって凍結した場合、材料の水平方向では減衰効果が最適化される一方で、垂直方向では減衰効果は弱まる。このように作られた材料は柔軟性が非常に高く、前後に何千回折り曲げても減衰効果は変わらなかった。また、吸収率は銀ナノワイヤの添加割合やエアロゲルの気孔率、複合材料の厚さによって簡単に調整できる。
さらに、銀ナノワイヤを取り除いたセルロースナノファイバーを、特殊なエッチングプロセスで作製した炭化チタンの二次元ナノプレートに結合することで、世界最軽量の電磁シールドの作成にも成功している。
(fabcross for エンジニアより転載)