木材、バクテリア、太陽の助けを借りて水を浄化する太陽光蒸気発生器を開発
2020/08/29 08:00
バクテリアが生産するナノ材料の助けを借り、太陽エネルギーを利用して水を浄化する木材ベースの蒸気発生器が開発された。この研究は中国科学技術大学によるもので、2020年7月8日『Nano Letters』に掲載された。
国際連合によると、世界の人口の約5分の1が、水が不足している地域に住んでいる。そのため、海水、川や湖の水、汚染水などを浄化し、飲料水を作り出す技術が急ぎ求められている。
太陽光蒸気発生器は、太陽エネルギーを用い、蒸発によって汚染物質から純水を分離する装置だ。これまで、さまざまな構造のものが開発されているが、より良い太陽光蒸気発生器を設計するには、光吸収、熱管理、水輸送、蒸発を改善する方法を見つける必要がある。
研究チームは、4つの改善点すべてを1つのデバイスに統合することを考え、3層構造の階層型太陽光蒸気発生器(Hierarchical Solar Steam Generator:HSSG)を開発した。上層に光を吸収するカーボンナノチューブ、中層に断熱ガラス球、下層に水を輸送する木材を用いる。ガラス球は、優れた断熱性を実現する小さな中空ガラス球の集合体だ。木材は持続可能性と多孔質構造を持ち、迅速な水の輸送を可能にする。また、このデバイスは、長いセルロースナノファイバーを生成するバクテリアの助けを借りることで、ナノファイバーによってデバイスの各層を連結している。
研究チームはまず、木材のブロックの表面にバクテリアを添付して発酵させた。次に、ガラス球のエアロゾルを表面に吹きつけた。ガラス球は、バクテリアによって生成されたセルロースナノファイバーに組み込まれ、ハイドロゲルを形成した。最後に、カーボンナノチューブを加えた。これはセルロースナノファイバーと絡み合って、光を吸収し、水を蒸発させる最上層を形成した。
このデバイスは、水を、太陽によって熱せられる光吸収層まで木材を通して輸送することで機能する。水が蒸発し、水蒸気が集められて凝縮され、純水が生成される。
ガラス球の断熱層は、熱がデバイスを通って下方に移って失われるのを防ぐものだ。また、ナノスケール構造が、水の蒸発に必要なエネルギーを低くする。その結果、このデバイスの蒸発率は1平方メートルあたり2.9kg/h、太陽光から水蒸気への変換効率は80%と、既存の太陽光蒸気発生器よりも高い効率を実現している。
(fabcross for エンジニアより転載)