エアコン不要で涼しい、放射冷却で温度を下げるシステム「Cold Tube」を開発
2020/09/26 08:00
高温多湿の屋外でも放射冷却で快適に感じられる「Cold Tube」が開発され、実証実験が行われた。エアコンのように人体の周囲の気温や湿度を下げることなく、直接人体から熱を奪うため、気温30℃、相対湿度65%でも快適に感じられるという。この研究は、ブリティッシュコロンビア大学、プリンストン大学、カリフォルニア大学バークレー校、シンガポールETHセンターによるもので、2020年8月18日、『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された。
電力を大量に消費するエアコンは、毎日何百万トンもの二酸化炭素を排出する、あまり環境に優しくない手段だ。また、セントラルエアコンでは細菌が再循環し、呼吸障害を引き起こすリスクが高まるなど、必ずしも健康に良いとは限らない。
今回開発されたCold Tubeは、長方形の壁または天井パネルの内部を冷水が循環することで冷たく保つシステムだ。熱は、より高温の表面からより低温の表面に、輻射伝熱によって移動するため、人がパネルの横または下に立つと、体の熱がより低温のパネルに向かって移動する。これにより、気温がかなり高くても、冷たい空気が体の上を流れるような冷える感覚が生まれる。
冷却パネル自体は、建築業界で数十年にわたって使用されてきたが、パネル周囲の空気の湿度を下げることなく壁や天井を冷やすと結露が起きてしまう。
そこで研究チームは、伝熱を妨げることなく結露の発生を防ぐために、冷却パネルを覆う密閉性のある防湿シートを考案した。これは赤外線透過性の低密度ポリエチレン膜で、露点以下の温度で放射冷却を提供し、冷却パネルを湿気の多い空気から隔離する。これにより、Cold Tubeは除湿システムと組み合わせる必要がなく、人からの熱放射を直接吸収するため、大幅な省エネを可能にした。
研究チームは2019年に、シンガポールでこれを用いた屋外放射冷却パビリオンを建設し、55人が参加する実証実験を行った。その結果、システムの稼働中、ほとんどの参加者は、平均気温が30℃であっても「涼しい」または「快適」だと報告した。また、特殊な防湿シートのおかげで、パネルは結露もしなかった。
研究チームは屋内空間に設計を適応させることを目指しており、現在、シンガポールで収集されたデータを用いて、世界中の屋内空間におけるCold Tubeの有効性の予測をアップデートしている。2022年までに、この技術の商業的に実行可能なバージョンを実証する予定だ。
(fabcross for エンジニアより転載)