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脳の仕組みを模倣できる「メモリスタ」を使って、エネルギー効率の良いAIシステムの実現へ

ロンドン大学の研究チームは、「メモリスタ(memristor)」という素子を人工ニューラルネットワークに利用することで、カーボンフットプリントを大幅に削減しつつ、従来のAIシステムに匹敵する精度を持たせる方法を開発した。研究結果は、2020年8月26日付の『Nature Communications』に掲載されている。

従来の人工ニューラルネットワークはノイマン型コンピューターを利用し、メモリとプロセッサの間でデータをやり取りしている。これは非常にエネルギーを消費するシステムで、推論精度の向上には時間と電力が必要になる。AIモデルによってはトレーニング時に284トン、乗用車5台分の生涯排出量に匹敵する二酸化炭素を排出するという。

その大量のカーボンフットプリントを削減して、半日ドライブくらいの量にできる方法がある。それが、脳内の情報処理の仕組みを模倣したニューロモーフィックコンピューターで、演算処理にトランジスタの代わりとしてアナログ素子のメモリスタを使うというものだ。

「メモリ付き抵抗器」とも表現されるメモリスタは、2008年に開発された新しいデバイスで、電源を切った後でも流れた電荷量を記憶している。メモリスタは0と1のバイナリだけでなく、その間の値も取れるため、より多くの情報を各ビットに格納できることから、効率の向上が期待できる。

例えばメモリスタをAIに実装した場合、従来のトランジスタベースのAIシステムよりも1000倍以上のエネルギー効率の改善が期待できるという。しかし、デバイスレベルもしくはシステムレベルのばらつきやノイズなどが推論精度に影響するため、エラーが発生しやすく、まだ実用化に至っていない。

研究チームは今回、Ta/HfO2(タンタル/酸化ハフニウム)、Ta2O5(五酸化タンタル)、aVMCO(アモルファス空孔変調伝導性酸化物)の3種類のデバイスを作製した。ニューラルネットワークをいくつかのサブグループに分割して処理し、それらのアンサンブル平均をとることで、誤差要因を相殺し、推論精度が大幅に向上することを示した。

今回の手法は、従来のAIシステムで実行されるソフトウェアツールのレベルに匹敵するほど高い精度だとしている。「我々の研究が示すのは、メモリスタに関しては、三人寄れば文殊の知恵だということだ。ニューラルネットワークを1つの大きなネットワークではなくいくつかの小さなネットワークに分割すると、全体的に精度が大きく向上する」と、研究チームを率いるAdnan Mehonic博士は語る。研究チームは、今後数年以内にメモリスタをAIシステムに適用できる可能性があるとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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