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暖かくなるとガラスの色が変わり、ソーラーパネルにもなる「スマートウインドウ」

Photo by Dennis Schroeder, NREL

米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)は、2020年10月16日、暖かくなるとガラスの色が濃くなり、ソーラーパネルにもなる「スマートウインドウ」の開発状況の進展について発表した。研究成果は、『Nature Communications』に2020年10月16日付で発表されている。

窓から差し込む太陽光によって発生する熱は、建物の冷暖房の必要性を左右する最大の原因だ。米国では、住宅や商業ビルで全電力の74%、全エネルギーの39%が冷暖房に利用されているという。これまでにも窓の色を変えて遮光効果を高め、ビルのエネルギー使用量削減が進められてきていた。「サーモクロミック(熱変色性)太陽光発電」と呼ばれる技術を用いると、暑くて晴れた日に窓のガラスが温められた際、まぶしい光をブロックして不要な太陽熱を減らすためにガラスの色を変化させることができるという。

さらに、窓ガラスの色が変化すると、材料に使われているペロブスカイト(灰チタン石)が発電し、窓がソーラーパネルにもなるようだ。NRELは、太陽光によって表面が加熱されると窓ガラスの色が暗くなるというサーモクロミックウインドウの先行研究を行っており、既に、透明な状態から赤褐色に窓ガラスの色が変化する際に、埋め込まれたペロブスカイトが電気を発生させることを明らかにしている。今回、研究者らは、メタルハライドペロブスカイトの低い形成エネルギーを利用して多色可逆性クロミズムを実証。無数の色への変化を可能にする技術を開発したという。

熱変色を引き起こす温度範囲は、以前は華氏150度~175度(約65.6℃~約79.4℃)だったが、華氏95度~115度(35℃~約46.1℃)と日常生活レベルに即した実用的な温度に対応するようになった。さらに、色が変化する時間も2017年の実証試験では3分かかっていたが、異なる化学組成と材料を使用したところ約7秒に短縮されたという。

研究者らは、2層のガラスの間に薄いペロブスカイト膜を挟み、蒸気を注入。すると、蒸気が化学反応を引き起こし、ペロブスカイトが鎖状からシート状や立方体へとさまざまな形状に変化する。そして、このペロブスカイトの形状が変化するにつれて色も変化するという仕組みだ。湿度を下げていくと、ペロブスカイトは元の透明な状態に戻るという。

今後は、太陽光の発電効率の調査や、再生利用可能回数の確認などの研究を進めていくことが計画されている。NRELの博士研究員であるBryan Rosales氏は「この技術を用いた窓のプロトタイプは、1年以内に開発できるでしょう」と述べており、開発された技術は、建築家と利用者の両方にとって望ましい建物の美観を造り出すことに貢献していくことになりそうだ。

fabcross for エンジニアより転載)

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