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下肢麻痺者の生活の質向上を目指す——起立型電動車椅子「Qolo」が「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」に向けてラストスパート

トヨタ・モビリティ基金は、イギリスのNPOであるNestaと共に、コンテスト形式の「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」を実施中だ。実施期間は約3年間で、2020年12月に優勝者が決定する。今回、その最終5組に選出されている日本のプロジェクト、チーム「Qolo」が開発する補装具のメディア向け発表会が、2020年11月16日にオンラインで開催された。

photo 座位から立位への遷移と走行が可能な起立型電動車椅子の最新型Qolo 3.0。

同チャレンジは、下肢麻痺者の自立した生活の支援と移動の自由に貢献する革新的な補装具に関するアイディア発掘と開発支援を目的としたもの。チームQoloが開発する補装具「Qolo」は、車椅子に座った状態で、座位から立位への遷移と走行が可能な電動車椅子だ。

photo チームリーダーは、筑波大学システム情報系教授の鈴木健嗣氏。

発表会のプレゼンターは、チームQoloを率いる筑波大学システム情報系教授の鈴木健嗣氏。鈴木教授によると、「車椅子の人々はこれからも座って生活をしなければならないのか?」という問いが開発の背景にあり、車椅子利用者の生活の質の向上を目指してプロジェクトに取り組んだという。具体的なチャレンジとして、「自然な立位・座位姿勢の遷移を実現」「立位・座位での移動を実現」「立位による健康寿命延伸の挑戦」を掲げている。

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Qoloによる座位から立位への遷移は、利用者が前方に重心を移動させることで行う。この遷移機構は、ガススプリングとスライド機構による機械式アシストで実現しているのが特徴だ。電動モーターではなくスプリングを使うことで、軽量化やコスト面でのメリットに加え、利用者が自分の意志で立とうとする動作を自然な形で実現し、途中で動作を中止することも可能になる。

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Qolo 3.0は、シート部、利用者の身体を固定する外骨格(Exoskeleton)フレーム、電動車椅子としての走行機能を実現するモバイルベースの3つのモジュールから構成されている。モバイルベースの電気駆動部分は既存の製品を流用しており、プロジェクトの技術開発は、外骨格部分を中心に行われている。

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発表会では実機を使ったデモも実施されたが、座位から立位、またその逆の遷移もスムーズで、開始から数秒で完了する。座位、立位それぞれの状態での安定性に関する安全性評価も実施しているとのことだ。

photo コンテスト期間は当初2020年9月までを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で3ヵ月延期され12月までとなった。

モビリティ・アンリミテッド・チャレンジは、2020年12月にチームQoloを含むファイナリスト5組より優勝1組を選出、製品化のための活動資金として100万ドルを支援する。チームQoloの活躍に期待したい。

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