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ヒトの皮膚の自然な機能を模倣でき、丈夫で伸縮性のある電子スキンを開発

Credit: © 2020 KAUST

アブドラ王立科学技術大学の研究チームは、温度感覚や触覚などヒトの皮膚の自然な機能を模倣できる耐久性のある電子皮膚を開発した。シリカナノ粒子で強化したハイドロゲルを基板とし、導電性ナノワイヤーで架橋した2次元材料MXeneシートをセンシングアレイとして使用。研究の詳細は、『Science Advances』誌に2020年11月27日付で公開されている。

電子皮膚は次世代の義肢装具、個別化医療、ソフトロボティクスなど、さまざまな分野で応用に期待が寄せられている。これまでに開発された電子皮膚の多くは、伸縮性のある表面にセンサーとなるナノ材料を積層している。しかし、表面とナノ材料の間の結合が弱いと耐久性や感度が低下し、強すぎると柔軟性が乏しく故障しやすくなる。理想的な人工皮膚は、温度感覚や触覚など皮膚の自然な機能を正確かつリアルタイムで模倣しつつ、日常生活の摩擦などにも耐えられる柔軟性を持たなければならない。

今回開発した電子皮膚は、シリカナノ粒子強化ハイドロゲルを基板に、1次元ポリピロールナノワイヤーで架橋したチタンと炭素からなるMXeneをセンシング層に使用している。強靭で伸縮性のあるハイドロゲルは、70%以上が水分のため皮膚組織と相性が良く、高導電性のナノワイヤーを架橋することで、センサー層へ導電性の経路を作ることができた。

その結果、電子皮膚は28倍に伸ばしても機能を維持するという驚異的な動作範囲を示し、20cm離れた場所にある物体を検知し、10分の1秒以内に刺激に反応した。また圧力センサーとしても使用でき、センサー上に書いた手書き文字を識別することが可能だ。さらに5000回のテスト後でも、高い回復性、安定性、耐久性を示した。

研究チームによると、開発した電子皮膚の普及には高解像度センサーのスケールアップが課題だという。

開発した電子皮膚の特徴は、今回使用したMXeneとポリピロールナノワイヤーの組み合わせに限ったものではない。研究グループは、半導体やMXene、1次元無機ナノワイヤーなどの種類を変えて、さまざまな材料特性と多機能性を持つ電子皮膚の開発を目指している。

fabcross for エンジニアより転載)

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