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液体ガリウムベースの機能性複合材料の開発——ガリウムの新たな用途を探る

韓国の蔚山基礎科学研究院(IBS)と蔚山科学技術大学(UNIST)の共同研究チームが、液体金属ガリウムに非金属フィラー粒子を混合して、電磁波シールド特性や熱伝導性など優れた機能性を発揮する液体金属複合材料を創成する手法を考案した。多様な表面にコーティングできるとともに、様々な形状に成形できることから、これまでのガリウムになかった用途範囲を切り拓くと期待される。研究成果が、『Science Advances』誌の2021年1月号に公開されている。

ガリウムは現在、窒化ガリウムおよび関連化合物によって青色LEDが製造されるなど、極めて重要な元素の1つになっている。ガリウムの需要の98%は、半導体とエレクトロニクス産業から発生している。一方、ガリウムは非常に低融点の金属であり、常温より少し高温の30℃で液体になる。また、他の金属とともに、各構成元素よりも融点の低い共晶合金を形成することが知られている。このような特徴を活かした、エレクトロニクス以外の用途開発が探索されているが、ガリウムベースの液体金属は表面張力が高く、ほとんどの表面において“濡れない”ことから、取扱いや成形、処理が難しく、実用化の障害になっている。

研究チームは、液体ガリウムにフィラー粒子を混合して複合材料化することにより、コーティングや成形などの取扱いが容易な液体金属複合材料を創成する手法を考案した。ガリウム材料は、導入する粒子量に応じて液体状態からペースト状またはパテ状に変化し、市販のプラスチシン粘土に似た特性と“手触り”を示すようになる。

還元型酸化グラフェンを混合したガリウムベースの複合材料を作製し、還元型酸化グラフェン皮膜上に13μm厚さでコーティングしたものは、皮膜の電波障害(EMI)シールド効率を20dBから75dBに向上することができた。これは、産業用(>30dB)および軍事用(>60dB)の用途に充分なレベルである。また、普通の紙に20μm厚さでコーティングしたものでも、70dB以上のシールド効率を示すことが判った。

そして、フィラー粒子としてダイヤモンドを含む複合材料は、実用化されている放熱グリスの熱伝導率79W/mKを50%以上も上回る最大110W/mKのバルク熱伝導率を持つことが示され、実際のデバイスを想定した実証実験では、熱源と放熱板の間に挿入される熱伝導材料(TIM)としての有効性が確認された。

研究チームは、最適な複合状態を得るためには粒子サイズが重要な役割を持つこと、およびインジウムガリウムなど常温以下で液体であるガリウム化合物にも展開できることを示した。今後、多様なフィラー粒子との組合せによって、ウェアラブルデバイスや医療インプラントなどにおいて、EMI特性、高伝熱性、高耐熱性、多孔質、展延性などの機能を発揮する、柔らかくてフレキシブルなエレクトロニクスに応用されると期待している。

fabcross for エンジニアより転載)

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