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MIT、折り紙のようにたためる医療用パッチを開発——カテーテルで送り込んで体内の傷を塞ぐ

Credit: Felice Frankel

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、折り紙のように折りたたむことができて、生分解性を持つ新しい医療用パッチを開発した。既存の医療器具を介して体内の損傷箇所に貼り付けることが可能で、細菌感染症も防げることから、低侵襲手術の縫合ツールとして利用できる。研究結果は、2021年2月1日付けの『Advanced Materials』に公開されている。

現在、腫瘍の切除や損傷した組織、臓器の治療は、患者の体への負担を減らして回復期間を短くするため、切開部を小さくし、細い手術器具や医療ロボットを用いた低侵襲手術が取り入れられている。「しかし、これらの手術では体内の傷をふさぐ工程に課題がある」と機械工学・土木環境工学教授のXuanhe Zhao氏は述べる。

体内の傷や裂傷をふさぐために現在使われている生体接着材料には、生分解性の液体もしくは接着剤が多い。これらは固化すると硬くなり、下にある柔らかい組織表面との密閉が十分でなくなる可能性がある。また、血液など生体液が接着剤を汚染し、損傷箇所にうまく接着できないかもしれない。さらに、接着剤は傷が完全に治る前に洗い流されたり、炎症や瘢痕組織の原因となることも考えられる。

そこで研究チームは、「湿った損傷表面に接着できること」「接着場所に着く前に他の部分に付かないこと」「接着後は細菌による汚染や過度の炎症に耐性があること」という3つの機能要件を満たす、3層構造の医療用パッチを開発した。

新しいパッチは、NHSエステルを組み込んだヒドロゲル材料で作った生体接着剤を2種類の層で挟み込んでいる。接着剤は湿潤表面に接触すると、水分を吸収して柔軟性と伸縮性を発揮して組織にフィットするとともに、NHSエステルと組織表面の共有結合が密封状態を生む。

下の層は潤滑油としてシリコーンオイルをコーティングすることで、体内を通る途中で他に付かないようにした。シリコーンオイルはパッチを損傷箇所に押し付ける際に絞り出されるので、中間層の接着剤が皮膚と結合できる。

上の層は双性イオンポリマーを組み込んだエラストマーフィルムで、周囲の水分子を引き付けてバリアを形成し、汚染物質からパッチを保護する。

パッチは折りたたみ可能のため、バルーンカテーテルや外科用ステープラーといった医療器具に装着した状態で気道や血管を通せる。動物モデルを使った実験では、カテーテルを膨らませたり、ステープラーに軽く圧力をかければ、パッチが損傷箇所に貼り付くことを確認した。さらに、接着から1カ月経っても、パッチやその周囲に汚染の兆候は見られなかった。

研究チームは、このパッチを医療器具へ装着しやすい形状に製造できると考えており、ロボット手術プラットフォームへ統合することを目指すとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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