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次世代型プリンテッドエレクトロニクスを可能にする導電性ポリマーインクを開発

photo by Thor Balkhed

スウェーデンのリンショーピング大学の研究チームが、高い安定性と高い導電性を有するn型導電性ポリマーインクを開発した。空気中および高温における安定性が高く、表面にスプレーするだけで蒸着でき、フレキシブルで軽量な有機エレクトロニクスデバイスを簡単かつ安価に製造することが可能になる。商品化が先行している水分散性p型導電性ポリマーと組み合わせることにより、インクスプレーをベースとした革新的なプリンテッドエレクトロニクスの発展に寄与すると期待される。研究成果が、2021年4月21日の『Nature Communications』誌に論文公開されている。

導電性ポリマーは、有機系バイオセンサーや太陽電池、発光ダイオード、トランジスタ、バッテリーなどの分野で、フレキシブルで軽量な電子部品の開発を可能にしてきた。シリコンなど無機系半導体と同様、様々なドーピング分子を加えることでその電気的性質を調節できるため、ドーピング分子の種類に従って、電子の移動によるn型導電体および正孔の移動によるp型導電体が考案されてきた。

一般的に使用されている導電性ポリマーに、ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドーピングしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のp型導電体PEDOT:PSSがある。PEDOT:PSSは、高い導電性と透明性、優れた耐熱性と安定性を有し、帯電防止剤や固体電解コンデンサ、有機ELや有機太陽電池のホール注入/輸送層などに実用化されている。特に注目されている特性として、水にコロイド分散可能な水分散性を有することから、将来的なプリンテッドエレクトロニクスへの応用が期待されている。しかしながら、多くのエレクトロニクスデバイスには、p型とn型の両方の機能の組合せが必要であるが、PEDOT:PSSに匹敵する導電性を有するn型ポリマーはこれまで実現されていなかった。

研究チームは、アメリカと韓国の研究者と共同で、空気中および高温で安定な高導電性n型ポリマーインクの開発に成功した。近年開発されたポリ(ベンゾイミダゾベンゾフェナントロリン)BBLに、ポリ(エチレンイミン)PEIをドーピングしたもの(BBL:PEI)である。BBL:PEIは、エタノールを溶媒としたインク状で供給され、表面にスプレーするだけで蒸着でき、BBL:PEI薄膜は8 S/cmの高い導電率を発揮することが分かった。

研究チームは、「次世代のプリンテッドエレクトロニクスを可能にする重要な進歩だ。様々な用途に適用するにあたっては課題も残っているが、量産の可能性が高いので実用化は遠くない」と、期待している。

fabcross for エンジニアより転載)

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