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衣服に動画や音楽を保存——微小チップを埋め込んだスマート繊維を開発 MIT

Image: Anna Gitelson-Kahn. Photo by Roni Cnaani.

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、ポリマー繊維に直接微小なメモリと温度センサーを埋め込み、柔軟かつ洗濯可能なデジタル繊維を作製した。機械学習と組み合わせることで、着用者の身体活動を検知、保存、分析、推測できる衣類としても利用できる。研究結果は、2021年6月3日付けで『Nature Communications』に掲載されている。

「この研究は、データをデジタルで保存し処理できる繊維を初めて形にしたもので、テキスタイルに新次元の情報コンテンツを加え、ファブリックを文字通りプログラム可能にする」と、Yoel Fink教授は語る。

開発した繊維は、ポリマーの前駆体に何百個もの微小メモリ(24CW1280X EEPROM)と温度センサー(MAX31875)を埋め込み、信号線、クロック線、アース線、電力線の役割をもつ4本のタングステンワイヤと共に繊維化された。ワイヤは繊維と平行で、各チップは短絡を避けるために特定の角度で繊維軸に対して傾いている。紡糸工程を正確に制御することで、微小チップを繊維内に点在させ、数十メートルに渡り連続的な電気接続を持たせることに成功した。

このデジタル繊維は、データの書き込み、保存、読み出しが可能だ。実験では、1m程度の繊維に767kbitのフルカラーショートムービーを保存できた。また、0.48MBの音楽ファイルを書き込み、電源を切って2カ月間保存した後、読み出すこともできた。

また、AI分野にも展開できる。研究チームは、繊維内部に1650個の接続を持つニューラルネットワークを組み込み、シャツの脇下にデジタル繊維を縫い付け、着用者の体表面データを270分間収集した。その後、これらのデータが体の動きとどのように対応するか解析し、ニューラルネットワークを訓練したところ、デジタル繊維は96%の精度で、着用者の動きをリアルタイムで推論することができた。

この繊維は、針の穴を通せる細さと柔軟性を備え、衣類に縫い込んでも着用者の動きを妨げない。また、耐久性も高く、10回洗濯しても性能に影響は見られなかった。実用化されれば、呼吸機能の低下や不整脈といった日常における体調の変化や、運動中の心拍データや筋肉の活動量を、服を着たまま瞬時に知ることができるだろう。結婚式の衣装に音楽を保存して、特別な日に花を添えられるかもしれない。

今回は制御に外部デバイスを使用したため、次は制御用マイコンを繊維に組み込むことも考えている。「それができれば、ファイバーコンピュータと呼ぶことができるだろう」と、研究チームは新技術の可能性に期待を込めている。

fabcross for エンジニアより転載)

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