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太陽光と微生物を使って空気から作り出す食用「単細胞タンパク質」——大豆より10倍収穫量が多いという試算

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ドイツのマックスプランク分子植物生理学研究所(MPI-MP)の研究チームは、人口増加に伴う自然破壊や食料危機への対策として、太陽光と微生物を使って空気から作り出す「単細胞タンパク質(SCP)」の実用性を見積もった。大豆など主要作物の栽培と比べて10倍効率が高いという。研究結果は、2021年6月29日付けの『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されている。

人口増加と食生活の変化は環境に絶えず影響を与えており、気候変動や種の保存のために、再生可能エネルギーを使った食料生産への取り組みが進められている。「空気から食料」のアイデアもそのひとつで、例えばフィンランドのスタートアップ「Solar Foods」は粉末状の食用タンパク質「Solein」を開発し、2023年のプラント稼働を発表している。ここではタンパク質の合成に微生物を使用するため「単細胞タンパク質(SCP)」と呼ばれている。

SCPの製造工程ではまず、空気中の二酸化炭素が集められ、微生物の栄養源となるギ酸塩などに変換される。微生物はバイオリアクターで培養された後、不要な有機物などが除かれ、食品や試料用のタンパク質に加工される。研究チームは、一連のプロセスの電力源に太陽光を利用した場合の土地やエネルギーの効率について包括的な評価を実施した。

太陽光発電とSCPを組み合わせると、年間のタンパク質生産量は1ヘクタールあたり15トンという試算になった。これは、人が1年間に必要とするタンパク質の量に換算すると520人分に相当する。同じ広さで大豆を栽培すると、年間1.1トン分のタンパク質、わずか40人分しか生産できないという。

コスト面での見積もりでは、ギ酸塩ベースのSCP製造はタンパク質1kgあたり約4~5ドルかかるという。これは、食品用のホエイタンパク質や植物性タンパク質と比べると同等だ。一方、飼料用の大豆かすや魚粉と比べると割高だが、技術が発展すれば価格を抑えることは可能で、大豆の大規模生産や魚の乱獲による汚染や生態系の破壊に起因するコストを考えれば、決して高いとは言えない。

SCPを食品として販売するには、安全基準や規制をクリアし、味を良くしたり健康上のメリットを示したりと課題は多い。消費者の反応も気になるところだが、人々は古来からパンや乳製品、醤油など微生物を使った発酵食品を口にしているので、市場へ受け入れられるだろうと研究チームは考えている。

fabcross for エンジニアより転載)

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