米大学が次世代のブレイン・コンピュータ・インターフェースシステムを開発
2021/10/29 07:00
ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)システムは、脳や脊髄に損傷を受けた人が体を動かしたり、思考でキーボードを操作したりするなどの自立支援機器に使用される。さらに近年では脳の状態をモニタすることで自身の集中力や認知力を高めることにも応用が進められている。
BCIシステムは、脳内に埋め込まれた(または頭皮に貼られた)センサにより脳神経の電気信号を検知し、その信号をコンピュターに送信して外部機器を制御する。現在のBCIシステムのほとんどは、1つか2つのセンサを使っているが、今回の研究ではニューログレインチップと呼ばれる塩粒ほどの大きさのセンサ群を脳内に分散配置。信号を無線でシステムのハブに送り、ハブが各センサからの信号の統合処理を行うシステムを開発した。
研究者らはまず、神経信号の検出、増幅、送信に関わる複雑な電子機器を、シリコン製の小さなニューログレインチップに詰め込んだ。次に、これらの小さなチップからの信号を受信する体外通信ハブを開発した。この装置は親指ほどの大きさの薄いパッチで、頭蓋骨の外側の頭皮に貼り付けることで、小さな携帯電話基地局のように機能する。ネットワークプロトコルを使用して、それぞれが独自のネットワークアドレスを持つニューログレインチップからの信号を統合処理する。また、ニューログレインチップに無線で電力を供給する。今回の実験では48個のニューログレインチップをラットの大脳皮質に設置し、脳の自発的な活動に伴う特徴的な神経信号を記録することに成功した。
また、逆方向となる脳を刺激する機能もテストした。刺激は、神経活動を活性化させることができる微小な電気パルスで行われた。この刺激は、神経の信号を処理するのと同じハブによって行われ、病気や怪我で失われた脳機能を回復させる日が来るのではないかと研究者たちは期待している。
今回の研究では、動物の脳の大きさから、48個のニューログレインチップに限られたが、得られたデータによると現在のシステム構成で770個まで対応可能とのことだ。最終的には、何千ものニューログレインチップにスケールアップすることを想定しており、実現すれば現在では実現不可能な脳活動の全体像を把握できるという。
研究成果は8月12日付の『Nature Electronics』に掲載されている。
(fabcross for エンジニアより転載)