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素材から考えるこれからの循環型社会——「ファブ3Dコンテスト2021」表彰式

「ファブ3Dコンテスト」は慶應義塾大学SFC研究所ファブ地球社会コンソーシアムが主催する、3Dプリンターなどのデジタル工作機械を活用するコンテスト。高校生以下を対象としたSTEM領域での実践的な経験の場として、2021年で6回目の開催となった。

今回は「循環型社会を促進するこれからの暮らし方」というテーマで、ファブの技術と新しい素材で、どのように暮らし方が変わり、循環型社会に寄与できるかに着目。環境に配慮した取り組みや、開発中の新素材を生かしたチャレンジを募集した。

日本各地、そして海外からも寄せられた全26作品の中から優秀な作品が発表された。2021年11月23日に開催されたオンライン表彰式の様子をお伝えする。

3Dプリント用新素材の提供

三菱ケミカルが提供したDURABIOフィラメント(左)とFORZEASフィラメント(右) ※写真はファブ3Dコンテストの公式ページより引用 三菱ケミカルが提供したDURABIOフィラメント(左)とFORZEASフィラメント(右) ※写真はファブ3Dコンテストの公式ページより引用

今回のコンテストでは循環型社会を促進するためのヒントとして、企業スポンサーである三菱ケミカルから参加者に3Dプリンター用の新素材が配布された。植物由来フィラメント「DURABIO(デュラビオ)」と、開発品である生分解性の軟質フィラメント「FORZEAS(フォゼアス)」の2種類だ。

一般的なPLAやABSといった3Dプリント素材と異なり、出力にはプリンターごとに適した条件設定の探索が必要となる。参加者は試行錯誤を重ねながら、素材の特性を生かしたものづくりに取り組んでいた。

最優秀賞|光を操る窓 Akarino ~あかりの~

製作:高校3年生 松木工弥さん 製作:高校3年生 松木工弥さん

最優秀賞に選ばれたのは、光を操る窓 Akarino~あかりの~。コロナ禍の部屋で過ごす時間を快適にするため、高い透明性を持つDURABIOを使って太陽光を拡散する窓を製作した。省エネルギー化を実現するために、新素材の特性と向き合った作品だ。

審査の過程では、日本家屋の欄間(らんま)に着想を得たデザインや透明度を生かした造形、見た人が素直に欲しいと思えるような完成度の高さが好評となった。設置後の明るさの変化まで数値で計測しており、他の人の参考になる丁寧なドキュメンテーションも高く評価され、最優秀賞に輝いた。

個人部門優秀賞|ALWAYS ~大切なペットとずっと一緒に~

製作:高校2年生 高石侑汰さん 製作:高校2年生 高石侑汰さん

個人部門での優秀賞はALWAYS~大切なペットとずっと一緒に~。生分解性であるFORZEASからアイデアを膨らませ、そもそも自然に還るべきものは何かと問いを立て、一般家庭でも使えるペット用の骨壷(つぼ)という案にたどり着いた。

作者の高石さんが所有する3DプリンターではFORZEASを使用できなかったため、何箇所も協力施設を探した結果、なんとかファブラボ関内の協力を得て完成した作品。鋭い着眼点を持ちながら、想定されるユーザーの思いまで反映した思慮深さが受賞の鍵となった。

チーム部門優秀賞|「植彩」~身のまわりに緑を~

製作:緑化委員 製作:緑化委員

チーム部門の優秀賞に選ばれたのは、最優秀賞を獲得した松木さん擁する「緑化委員」。土の代わりに多孔質構造の3Dプリント造形物で植物を育てる試みを、「植彩」~身のまわりに緑を~という作品にまとめ上げた。

多孔質構造を実現するため、Fusion360のボロノイ構造プラグインや、スライサーソフトのジャイロイド設定をふんだんに活用。FORZEASの造形特性を踏まえたモデルを造形し、コンテストへの応募後も、土に還ることを想定してコンポストでの実験を続行している徹底ぶりだ。

個人部門特別賞|まえからトレイン~おにぎりを乗せた夢の特急列車~

製作:高校2年生 柳瀬真里さん 製作:高校2年生 柳瀬真里さん

個人部門特別賞に選ばれたまえからトレイン~おにぎりを乗せた夢の特急列車~は、SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」に注目。コンビニでの食品ロスを減らすべく、賞味期限が近い手前の商品を取る(てまえどり)ための仕掛けを考案した。

単なる机上のアイデアではなく、コンビニに勤める店員へのインタビューに基づいて進めた実践的なプロジェクトであることが高く評価された。分かりやすい動画の制作や、コンビニ独自のポイントシステムとの関連づけなど、実際に人々の行動を変容させうる行動力が審査員の心に響いたようだ。

チーム部門特別賞|ウイタツ~ウイルスから身を守ろう~

製作:Seahorseふたば(高校1年~2年) 製作:Seahorseふたば(高校1年~2年)

ウイタツ~ウイルスから身を守ろう~は、チーム部門での特別賞を受賞。コロナ禍で始まったチーム活動は、途中までメンバー全員での対面がなかったというリモートの徹底ぶり。それでも各メンバーの特技を生かしながら、公共物に手で触れることを避けつつ消毒用アルコールも収納できるプロダクトを完成させた。

教育施設賞|epis わかば深セン教室

3Dデータが完成した後、メンバーがVR空間に集まって形状のレビューを実施した。 3Dデータが完成した後、メンバーがVR空間に集まって形状のレビューを実施した。

審査過程で急きょ設けられた教育施設賞に選ばれたのは、深センから参加したepisわかば深セン教室。Zoomを活用したモデリングのサポートやVR空間での試作品レビュー、動画をふんだんに活用した活動記録など、コンテストの開催趣旨に沿った教育活動の貢献が認められた。

試行錯誤を通じてより良い循環型社会へ

コンテスト参加者と実行委員の集合写真(提供:慶應義塾大学SFC研究所ファブ地球社会コンソーシアム) コンテスト参加者と実行委員の集合写真(提供:慶應義塾大学SFC研究所ファブ地球社会コンソーシアム)

表彰式の最後に閉会の言葉を述べたのは、ファブ3Dコンテスト実行委員長の田中浩也教授(画像最上段左から2番目)。参加者が新素材と格闘していたように、企業側でも品質の改善を続けていることに触れ、両者が共に歩むコンテストの価値と楽しさを振り返った。2022年以降のコンテストも予定されており、より良い循環型社会に向かい、楽しんでものづくりを続けていこうというメッセージと共に、2021年のコンテストが締めくくられた。

ファブ3Dコンテスト2021受賞作リスト

  • 最優秀賞「光を操る窓 Akarino ~あかりの~」
  • 個人部門優秀賞「ALWAYS ~大切なペットとずっと一緒に~」
  • チーム部門優秀賞「「植彩」~身のまわりに緑を~」
  • 個人部門特別賞「まえからトレイン~おにぎりを乗せた夢の特急列車~」
  • チーム部門特別賞「ウイタツ~ウイルスから身を守ろう~」
  • 教育施設賞「epis わかば深セン教室」
  • スポンサー奨励作品(三菱ケミカル)「はじめてのマイ・コンポスト」
  • スポンサー奨励作品(グッディ)「土にかえる蛙」

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