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いくつになっても夢を諦めないで——89歳で物理学博士となった研究者の物語

「将来は物理学者になる!」その思いを何十年も胸に秘め、ついに89歳のManfred Steiner氏は物理学の博士号を獲得した。一度は物理学の道を諦めたものの、70歳で定年を迎えた時に「ゴルフばかりしている人生は想像できない」と大学に入り直し、約20年かけて夢をかなえたのだ。

そして、学位論文を書き終えた今も研究を続け、定年間近の人には「もし夢があるなら、追いかけなさい。年を取っていても豊富な知力がある」といい、夢と現実の間で迷っている若者には「もし夢を諦めたら、ずっと後悔することになるだろう」と語りかけている。

高校時代をウィーンで過ごしたSteiner氏は、当時から物理学に強く惹かれていた。しかし、時は第二次世界大戦後の激動の混乱期、家族や親戚に勧められるまま、彼は医学の道に進んだ。1955年にウィーン大学で医学博士号、1967年にはマサチューセッツ工科大学(MIT)で生化学博士号を取得している。実は、物理学は3つ目の博士号というわけだ。

現役時代のSteiner氏は、血液学の専門医としてブラウン大学やノースカロライナ大学の要職に就き、医学の研究に従事していた。しかし、物理学への情熱は決して消えることはなかった。医学部にいた時も、場の量子論のThirringモデルで知られるWalter Thirringの講義を何度か聞きに行ったという。「彼の講義はいつもワクワクした。量子力学は私を魅了し、もっと詳しく学べたらと思った」と語っている。

「物理学は常に私の一部だった」が「医学は中途半端にはできない。人生を捧げる必要がある」ため、量子力学に没頭するには定年を迎えるまで待たなくてはならなかった。70歳目前で物理学の世界に入ることを決めたSteiner氏は、最初はMIT、後に通学時間が短いブラウン大学で学んだ。

学位論文のタイトルは「Corrections to the Geometrical Interpretation of Bosonization(ボソン化の幾何学的解釈の訂正)」で、論文を審査した教授の1人は「彼の理論には、素晴らしく高度で習得が難しい技術が含まれている。彼を見ていると、自分も物理学者として鼓舞され、力を与えられる」と高く評価している。

Steiner氏は、常に脳が冴えた状態であろうとしていて、物理学はその助けとなったとしている。現在も論文出版のために研究を続けている。物理学への情熱はまだまだ消えないようで、「この論文が完成して出版した後も、研究を続けたい」と意欲を見せている。

fabcross for エンジニアより転載)

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