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太陽光と大気からカーボンニュートラルな燃料を生成する技術を開発——燃料精製プラントの最適な立地は砂漠地帯

Photograph: Alessandro Della Bella / ETH Zurich

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHチューリッヒ)は、太陽光と大気からカーボンニュートラルな輸送燃料を製造できるプロセス技術を開発したと発表した。この研究は、同大学が独サステナビリティ上級研究所(IASS)と共同で行ったもので、2021年11月3日付で『Nature』に掲載された。論文では、この技術で製造できる「solar kerosene」の生産拡大のインセンティブとなる政策の枠組みについても述べられている。

航空業と海運業は、現在、人為的なCO2排出量の約8%を占めており、観光業や世界貿易の拡大により、この割合はさらに増加すると予測されている。CO2排出量が実質ゼロとなるようなカーボンニュートラル輸送は、充電式バッテリーを動力源とする電気モーターで実現可能だが、長距離の商用旅行、特に飛行機での旅行で実現するのは不可能ではないにしても困難だ。そのため、航空輸送や海上輸送を持続可能なものにするには、カーボンニュートラルな燃料が不可欠となっている。

研究チームは、ETHの機械研究所の屋上にミニソーラー燃料精製プラントを設置して2年間稼働させてきた。このミニプラントは、空気中からCO2を抽出して合成液体燃料を製造する。この燃料は製造時に空気中から抽出した量と同量のCO2を燃焼時に放出するので、全体的なCO2排出量は実質ゼロとなり、カーボンニュートラルな合成液体燃料の製造に利用できる。

ミニプラントでは、CO2と水を吸脱着プロセスによって大気から直接抽出し、抽出したCO2と水をパラボラ集光器の焦点にあるソーラーリアクターに供給する。太陽放射は3000倍に集光され、ソーラーリアクター内部で1500℃の熱を発生させる。

リアクターの中心部は酸化セリウムでできたセラミック構造で、ここでは2段階の熱化学反応が起きる。第1段階では酸化セリウムが還元され、酸素が放出される。第2段階ではCO2と水が加えられ、水素と一酸化炭素の混合物である合成ガスが生成される一方で、酸化セリウムが酸素を吸収して酸化する。こうして初期状態に戻り、再びサイクルを開始できる。生成された合成ガスは、ケロシン、ガソリン、メタノールなどさまざまな炭化水素に変換される。

研究チームは、灯油やガソリンなど石油由来の液体炭化水素燃料に代わる合成燃料を「ドロップイン燃料」と名付けており、ミニプラントで、太陽光や大気をドロップイン燃料に変換する熱化学プロセス全体の技術的実現可能性を実証することに成功している。現在、この技術は産業用途での使用に十分なレベルまで成熟しているという。次の目標は、この技術を産業規模に拡大し、競争力を獲得することだ。

今回、全プロセスを分析した結果、この燃料を産業規模で生産した場合、1リットル当たり1.20〜2ユーロ(約150〜260円)のコストがかかることが明らかになっている。太陽光が豊富に降り注ぐ砂漠地帯は、精製プラントの設置場所として特に適しているという。農地不足のため可能性が限られているバイオ燃料とは異なり、この技術を世界の乾燥地帯の1%以下で活用すればジェット燃料の世界的な需要を満たすことができ、食料や家畜飼料の生産と競合することもない。

ただし、初期投資コストが高額であることから、solar keroseneの市場参入を確実にするには政治的な支援が必要となるだろうとの指摘もある。研究者らは、市場導入の初期段階はsolar keroseneのシェアを0.1%にすることを推奨しており、そうすることで生産設備建設を促進し、技術向上と価格低下へとつながることが期待されている。

fabcross for エンジニアより転載)

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